巣鴨。「おじいちゃんおばあちゃんの原宿」こと巣鴨地蔵通り商店街が圧倒的な知名度を誇っている。
しかし、多様な飲食店が軒を連ねる一駅隣の大塚、その先の巨大副都心・池袋、少し足を延ばせば下町情緒が残る谷根千(谷中・根津・千駄木)などと比べると、今ひとつキャラが弱く、個性的な店が集まっているイメージが少ないのも事実だ。山手線と地下鉄都営三田線という、そこそこのアクセスのよさを持ちながら、これほどノーマークな町があるだろうか。
「今こそ、巣鴨の正解が知りたい」
そう考えたBRUTUS編集部は、今回、巣鴨を徹底的にリサーチ。すると、おじいちゃんおばあちゃんの原宿のイメージを覆す、スタイリッシュな新店、個性的な店主たち、歴史ある老舗の数々に出合い、気づけば誰も見たことのない巣鴨ガイドが出来上がった。
もう、巣鴨で迷わない。まずは近年オープンした4店をご紹介。
〈シノワ エトワール ヴェリテ〉
閑静な住宅街に佇む本格中華店
まず訪れたのが〈シノワ エトワール ヴェリテ〉。なんでも10月にオープンしたばかりの中華料理店で、ところは六義園界隈の閑静な住宅街・大和郷の一角。
飲食店で経験を積んできた和田真実さんが、料理人である星久人さんと共同でスタート。星さんは〈銀座アスター 本店〉で料理長を務めたのちに、中国人シェフが集う高級店で本場さながらの中華を学んだのちに独立。
日本人の舌に合う和製中華から、酔っ払い海老や鮮魚の激辛発酵唐辛子蒸しといった尖った本格中華まで幅広いメニューが揃う。大切な人との食事にはもちろん、ちょっとしたパーティにももってこいだ。
〈のをと菓子店〉
美意識が光る洗練された和菓子店
続いて訪れたのは〈のをと菓子店〉。小さく品のある和菓子屋さんだ。店頭にきちっと並ぶお菓子の様まで美しい。
店はグレーを基調にしたシンプルなデザイン。奥がキッチン。
店主の上野純弥さんは、フランス料理に始まりパン、洋菓子の世界を渡り歩いて、和菓子にたどり着いたという。「主張が控えめな和菓子が性に合ってるんです。胃にももたれませんしね」。
定番のどら焼きは、包装のインパクトも甘さもどちらも控えめ。12月ごろにはきなこ餅、春には桜を使った餅菓子なども登場、という具合に四季も味わえる。巣鴨土産にももってこいだ。
〈ヨネイチ〉
店主のトークに和む部室的カフェ
〈のをと菓子店〉のお菓子を置いている、一風変わったカフェがあるらしい。そう聞いて向かったのが〈ヨネイチ〉。住宅街に控えめに現れる「カフェ」の立て看板。そして店先にディスプレイされたクラシックカーのインパクトたるや!
気になって入ってみれば、ナイスなアフロヘアの店主・米林克士さんがお客さんと談笑中。お客さん曰く、オープンして約10カ月ほどだがすでに“部室”のような人の溜まり場になっているという。
和食のプレートはトーストのセットに飽きたというお客さんのために他のお客さんのアイデアでスタートしたというし、店内に飾られた絵は米林さんの友人であるミーイシイさんによるもの。
コーヒーにハマったのを機に開業したという米林さんだけれど、生まれ育ちは巣鴨でこの店もかつての実家だというし、以前はインドネシアで仕事をしていて現地語も話せるという、かなり濃いめのキャラクター。トークも楽しみに人が集まる場所なのだ。
〈カフェ ド ミュー〉
巣鴨のモーニング、新定番
〈のをと菓子店〉から〈ヨネイチ〉に向かう道すがら、グリーンの庇が印象的なカフェを見つけていた。それが〈カフェ ド ミュー〉。30代半ばの渡邉直人さん、望さんが夫婦で営む喫茶店だ。
ともに本駒込にある老舗喫茶店〈カフェさおとめ〉で働き、この4月に独立。〈さおとめ〉でも提供してきたというモーニングメニューを朝7時から楽しめるのが大きな魅力のひとつ。
アップルシナモントースト(800円)やクロックムッシュ(850円)の味わいはさることながら、フレンチでも修業を積んだという直人さんが作るスープが絶品。休日を巣鴨で過ごすなら、朝からここへ。