又吉直樹
せきしろさんと知り合う前は、大喜利のお題に対する回答として「これ好きやけど、伝わらないやろな」っていう、どこにも出せないモノを集めてたんです。誘ってもらって、ようやく出せる場所を与えてもらった。
せきしろ
2人とも看板を音読するんですよ。誰かと歩いてても、○○耳鼻科とか声に出すから、すごく嫌がられる。だから、空気感として又吉君とは同じモノがあるんではないかと。
又吉
ずっと頭の中でしゃべってる状態ですよね。歩いてても「あいつ、自分のことカッコいいって気づいてる顔や」とか。俳句を作るようになって、これくらいの長さで言葉を考えるようになりました。
せきしろ
たぶん、大きく分けると病気かもしれない。「姿勢が良い人」とかどうでもいいことですもんね。
又吉
けど、思ってしまう(笑)、「だから何なんだ!」ってことを。
俳句が好きだったけど、ルールがいろいろとあるので、自分でやろうとは思わなかった。「かな」とかつけるのもなんだか恥ずかしくて。そんな時に自由律俳句というジャンルに出会ったんです。
せきしろ
自由律俳句の中でも種田山頭火の句はカッコいいんですが、尾崎放哉のはものすごい笑える。笑わそうとはしてないはずなのに。
又吉
「墓のうらに廻る」とか、いわゆる「そのままじゃないか」という面白さの句もあれば、「すばらしい乳房だ蚊が居る」というのもある。
僕が言うのもおこがましいですけど、ジャンルとして、もっとメジャーになってほしい。そうすれば、50年後の国語便覧の俳句史の系譜にこの本の紹介とともに僕らの名前が載るかもしれない。
せきしろ
でも、絶対に太字にはならないですよね(笑)。
自由律俳句
作/せきしろ
作/又吉直樹