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夏子の部屋 ゲスト:柳澤綾子(ケイト・スペード ジャパン)メンタルヘルス、ケアしてる?

夜な夜な世界中から様々な分野の著名人が訪れる、1日1組の完全紹介制フレンチレストラン〈été〉。オーナーシェフの庄司夏子さんは、女性がマイノリティと言われる料理業界において24歳で独立開業し、2022年にはアジアの最優秀女性シェフ賞にも選ばれた。彼女がシンパシーを感じ、会いたいと思う人に会いに行くこの連載。第2回のゲストに迎えたのは、「ケイト・スペード ニューヨーク」日本法人で代表を務める柳澤綾子さん。「ケイト・スペード」が提唱しているメンタルヘルスのケアについて、庄司さんと情報共有した。

photo: Yu Inohara / text: Rio Hirai

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良い仕事にメンタルヘルスのケアは欠かせない

ケイト・スペード ジャパンの柳澤綾子と庄司夏子

柳澤綾子

ずっとお会いしてみたかったので、今回お誘いいただいて嬉しかったです。

庄司夏子

こちらこそ!私が持っているこのテニスボールのバッグもケイト・スペードのものなんですよ。今回はケイト・スペードが大切にしているメンタルヘルスケアについてお話を伺ってみたかったんです。

柳澤

ケイト・スペードが女性のエンパワーメントにおけるメンタルヘルスケアの重要性に気がついたきっかけのひとつに、2013年に始まったルワンダのプロジェクトがあります。このプロジェクトは、内戦で大きなダメージを受け、男性の多くを失ったルワンダの女性たちの生活を支えていくために始まりました。

資金や機材を提供するだけではなく、商品として流通させられるバッグを作るノウハウを伝えたり、彼女たちが自立できる方法を考え実践するなかで、欠かせなかったのはメンタルヘルスケアのサポート。ライフスキルトレーニングというプログラムを、1日1時間導入したんです。

庄司

なるほど、経済的な復興にもメンタルヘルスケアは欠かせないという判断だったのでしょうか。

柳澤

凄惨な出来事があったあとですから、まずはメンタルヘルスのケアは欠かせないと考えました。ルワンダの女性たちは、働き盛りの男性を内戦で失い、自分たちが家族の面倒を見ながら働かなくてはいけない状況で、自分の心や体のケアについては後回しにしていたんです。

そこでライフスキルトレーニングを通じてカウンセリングや食事の指導を行うことで、心身の向上を目指し、その効果はきちんと結果として表れました。さらに2018年には、ブランド創業者のケイト・スペード氏が自死してしまうという悲しい出来事が。経済的にも自立していて華やかで明るく見える人でも、人から見えないところでメンタルの問題を抱えていることがあるというのは、衝撃的な出来事でしたね。

それをきっかけに、世界中の女性たちがよりJOY(喜び)に満ちた人生を送れるように後押しすることを目指し、メンタルヘルスケアの普及をブランドの命題として捉えるようになりました。

庄司夏子

庄司

それは、衝撃ですね。〈été〉は、私以外の4人のスタッフも含めて全員女性です。女性しか採用しないというわけではなく、たまたま縁があってのことですが、これは飲食業界では稀有な例なんです。

柳澤

そうなんですね。女性のオーナーシェフが珍しいのは感じていましたが、どういったことが原因なのでしょうか。

庄司

飲食業界はすぐにやめてしまう人も多く、スタッフの定着率が問題になっています。これはやはり労働環境がハードだったり、モラハラ、パワハラのような悪習が残っている現場があったりするからだと思うんです。しかし良い料理やサービスを提供するには、良いチームが欠かせません。

だからこそ、自分のチームでは働きやすい環境を整えたいと思っているんです。ケイト・スペードでは、スタッフのメンタルヘルスケアのためにどんな対策をとっているんでしょうか。

業務外の話も共有して心理的安全性を保つ

ケイト・スペード ジャパンの柳澤綾子

柳澤

ケイト・スペードで今リーダーシップを取っているのは、グローバルでは9割近く、日本では6割が女性です。メンタルヘルスだって、フィジカルヘルスと同じように考えればいいと思うんですよ。

例えば「風邪を引いたから病院に行った」という話はしても、「ちょっと(気持ちが)辛いからカウンセリングに行った」というのは話しづらい環境がありますよね。でも2人に1人はメンタルに支障をきたす“メンタルイルネス”の状態を人生で経験する(※)と統計でわかっている。

誰しもがなりえるからこそ、メンタルイルネスにならないように予防策を持っておくといいですね。ケイト・スペードは社内の会議で「メンタルグッドな状態を保つためにやっていること」を発表したり、「自分がメンタルイルネスに陥るのはこういうとき」というパーソナルストーリーをシェアして、メンタルヘルスについて話すハードルを下げるようにしています。庄司さんは、自分の職場でどんなことを心掛けていますか?

庄司

私は、感情論で怒らないことを決めました。なぜだめなのか、ロジカルに話すようにしています。あとは、リーダーとして裸の王様にならないように店のリネンの管理や、トイレ掃除をして常に初心を忘れないようにしています。

自分自身のことをちゃんと見てあげる、というのも大切ですね。好きな漫画を読んだり、お酒を飲んだりというのはすぐにできるセルフケアですが、仕事やプロジェクトをチームで達成できた瞬間に癒やされる場合が多いです。

柳澤

庄司さんがおっしゃるように、私はセルフケアって人それぞれだと思うんですね。美味しいものを食べるのもセルフケアだし、ちょっと体を動かすのもセルフケアだし、私自身もいくつか自分のための方法を持っています。

ケイト・スペード ジャパンの柳澤綾子と庄司夏子

庄司

メンタルヘルスケアと一言で言っても様々な方法がありますね。私は、飲食の仕事があったおかげでこうして様々な人と出会えているからこそ、恩返しのひとつとして「飲食業界で働きたい」という人を一人でも増やしたい。そのためにも、まずは自分の職場からメンタルヘルスケアを大切にしていきたいです。

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