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編集者・村松亮が住まう、家族と共に時間を重ね成熟していくベルギー民家

浅間山の南麓に位置する長野県御代田町。隣接する軽井沢と比べ観光客も少なくのどかな地域ながら、今、クリエイティブな仕事に携わる移住者が増えている。ここを新たな暮らしの拠点に選んだ村松 亮さんの家を訪れた。

photo: Taro Hirano / text: Emi Fukushima

編集者の村松亮さんが土地を購入したのは2019年。ヨーロッパ郊外を思わせる湖畔の美しい土地に、4人の家族で暮らす家を建てた。

「もともとは長野県の駒ヶ根と東京に家を持ち、家族は駒ヶ根に住み、僕は両方を行き来していました。ですが子供の進学もあり、腰を据えて家族で暮らしながら、東京にも通える場所に引っ越したいなと。たまたま見つけた湖畔の土地に惹かれて移住を決めました」

家は、柱や梁にダイナミックな丸太の無垢材を用いたベルギー民家と呼ばれるスタイルを踏襲。設計を手がけたのは木の家造りへの幅広い知見を持つ菱田工務店だ。

「建てる家のイメージが浮かばず悩んでいた頃、菱田工務店の菱田(昌平)さんと知り合う機会があって。ベルギーで伝統的な家造りを学び、帰国後に建てたというご自宅を見せてもらった時に、これだ、と。湖畔の風景にも馴染む温かみと時代や流行に左右されない普遍性に心を掴まれました」

室内には妻と買い集めてきたアンティーク家具やオブジェが点在。それらを囲む空間には、汚れや傷も味になるモルタル調のデコリエという床材や古材など、経年変化が美しい素材が採用された。

「キッチンの棚板には古材を用いたり、アイアンの階段の手すりはわざと錆びつかせたり。住み始めて2年ほどですが、使うたび馴染んでいく空間も気に入っています」

余白のある土地ゆえに育む面白さがある

土地ありきで御代田に拠点を移した村松さんだが、この地域に暮らす新たな魅力も感じ始めている。

「松本や軽井沢ではすでに文化的な活動が盛んですが、御代田はまだ余白がある。前村さんの声かけで始まり熊野さんや僕も参加する、デザインを軸に町を楽しむプロジェクト『ミヨタデザイン部』もこれから活動が活発化していくところです。昨年には御代田写真美術館も開業し地域も変化する中、何ができるか今から楽しみです」

御代田に集まるのは、自らの手で暮らしを作る気概を持ち、その過程も含めて楽しむ人々。クリエイティブな感性を携えた彼らが緩やかに連関することにより、新たな活動も芽吹いていくことだろう。

御代田駅前には、クリエイターたちの活動拠点も完成

去る2023年4月15日、御代田駅前にオープンしたのが、カフェやゲストハウスなどの機能を持つ交流拠点〈CORNER SHOP MIYOTA〉。

衰退していた駅前を活性化しつつ、「ミヨタデザイン部」の活動をより地域に開くため、前村さんが中心となり作った場所だ。熊野さんの家具が置かれたり、同じく御代田に暮らすプロダクトデザイナーの藤城成貴さんも什器制作に参加したりと地域ゆかりのクリエイターの力が結集した空間も魅力。

長野〈CORNER SHOP MIYOTA〉