建築家・工藤桃子が案内する〈長野県立美術館〉。名建築と自然、作品の競演を体感

長野は日本一、美術館・博物館が多い県。しかも、世界的に著名な建築家の名作揃いです。そこで「建築と自然」をテーマに、今訪ねたい館を厳選。小諸と東京に拠点を持つ建築家・工藤桃子さんに案内してもらいました。

photo: Satoshi Nagare / text: Masae Wako

「安藤忠雄、伊東豊雄、今井兼次、菊竹清訓、谷口吉生、内藤廣、西沢立衛、宮崎浩、宮本忠長、村野藤吾。長野の美術館・博物館は、世界的な建築家による名作揃い。しかも、どの館も長野の山の景色を生かした造りになっているんです」と話すのは、小諸と東京にアトリエを持つ建築家の工藤桃子さん。注目は2021年春にリニューアルオープンした長野県立美術館本館。

1966年に林昌二が設計した旧信濃美術館を、宮崎浩+プランツアソシエイツが全面改築したものだ。

「誰でも自由に入れる屋上広場に出ると、西の正面に善光寺の檜皮葺き屋根が見え、奥には美しい山が広がっている。町の象徴である善光寺と、“つながる”建築が新鮮です」

その建物は北側の水辺テラスを介し、谷口吉生が90年に設計した東山魁夷館ともつながりを持つ。

「展示を見終わって最後の扉が開くと、突然、水盤のある中庭が現れる。水面の光が天井に反射する光景に、一瞬で心掴まれます。描かれた自然に和んだところで、本物の自然と出会う。建築の美しい仕掛けです」

長野県立美術館(本館)

設計:宮崎浩+プランツアソシエイツ

2021年4月リニューアルオープン。善光寺東側の城山公園内に立ち、菱田春草など信州出身作家の作品を収蔵。改築にあたり宮崎は、善光寺~本館~東山魁夷館が「連歌のようにつながる美術館」を考案。土地の高低差を生かしつつ水庭や屋上デッキを配し、周囲の豊かな景観と一体化する場を造った。

長野県立美術館(東山魁夷館)

設計:谷口吉生

1990年開館、2019年リニューアルオープン。茅野市の御射鹿池を描いた「緑響く」や遺作「夕星」など、稀代の日本画家・東山魁夷の作品を970点余収蔵。

魁夷は18歳の時に旅した木曽の風景に感銘を受けて以降、信州を故郷と呼び、その風景を多く描写。晩年には自ら作品を県へ寄贈した。魁夷と親交のあった世界的建築家の谷口は、作品の額縁となるよう直線的な造形を意図。池のある中庭や低い塀により、市民が気軽に立ち寄れる開放感を生んだ。

〈長野県立美術館 〉外観