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長井短「優しさ告げ口委員会」:勇気守る人

演劇モデル、長井短さんが日常で出会った優しい人について綴る連載エッセイ、第20回。前回の「見守りの人」も読む。

text&illustration: Mijika Nagai

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夏を味わい尽くしたくて、水着を買うことにした。これは大事件なので心臓をバクバクさせながら街を彷徨(さまよ)う。え、水着ってどこで買えんの?何もわからず彷徨い続けた新宿で、遂に辿り着いたのがムラサキスポーツ。水着コーナーにはこれでもかってくらい色んな種類の水着が並んでいて胸が弾む。

ギャルみたいなのもあればストイックなスポーツタイプ、体を隠しながら着られるものもあったりで凄まじい守備範囲である。気に入ったものを選んで試着に進むと、試着室の姿がいつもと違った。入口のカーテンが二重になっているのだ。それに、いつもは人のいない試着室の横に店員のお姉さんが陣取り続けている……なるほど。とても心強い気遣いだ。

常に見張ってくれている女性がいること、そして二重になったカーテンのおかげで「これどうかな?」ってダチに見せる際、他人にも覗かれてしまう危険が滅している。これなら安心して試せるじゃんね。

長井短「優しさ告げ口委員会」:勇気守る人

そして、気遣いはこれだけで終わらない。試着室の中には水着に関する豆知識が大量に貼られているのだ。「サイズが合ってるか不安な人はスタッフまで!一緒に選びます!」。あ〜もう心強さが止まらねえよ。私達がちょっと緊張して、不安を抱きながら水着を買いに来ること、ムラサキスポーツは知っている。

その不安が楽しみに変わるようにっていうポジティブなエネルギーが手作りポップから溢れ出ていて、ん?この試着室、どこかに似てるなって考えると、それは保健室。不安を一緒に抱きしめて、それから送り出してくれる場所。おかげで私は今年、胸を張って海に出かけることができました。ありがとう。

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