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長井短「優しさ告げ口委員会」:お寿司ちゃん

演劇モデル、長井短さんが日常で出会った優しい人について綴る連載エッセイ、第8回。前回の「ご機嫌な人々」も読む。

Text&Illustration: Mijika Nagai

インスタグラムのDMに、時々知らない人からメッセージが来る。それはごくたまに驚くべき悪意のあるものだけど、ほとんどはとても嬉しい、優しいメッセージだ。私は基本的に、SNSでリアクションをしない派なので、どんなDMが来ても返信はしない。たぶんだけど、そういう人が多いんじゃないかと思う。

送られてくる文面を見ても、返信を求めている雰囲気はなくて「頑張ってね!」とか「好きだよ!」の言葉の後には大抵「言いたかっただけです!」という一文が添えられている。好意を示してくれるだけでありがたいのに、そこに重ねてこちらへの気遣いまで送ってくれるなんてホスピタリティのサプリでも飲んでんのかなって毎度驚きです。

どんなDMも嬉しい。その中でもここ最近、凄く私を支えてくれている女の子がいて、名前も顔も知らない彼女を私はお寿司ちゃんと呼ぶ。インスタライブをした時に「肩書き寿司にしたい」ってどうやら私は言ったんだけど(記憶なし)その意味不明な言葉を叶えてくれたからだ。

初めてお寿司ちゃんから届いたDMには「寿司足しておきました」という文言と共にWikipediaのスクショが添付されていて、嘘だろ……人の夢を叶えるのは難しい。私たちは魔法使いじゃないっていう圧倒的事実があるし、同時に、みんな自分の夢を叶えることで忙しいからだ。

長井短 優しさ告げ口委員会 イラスト

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お寿司ちゃんだって、自分の人生で毎日とっても忙しいはずだ。それなのに、私なんかの為に自分の時間を割いて、Wikipediaに「肩書きは寿司を希望している」と書き込むその気持ちは、一体どこからくるのだろう。私なら、頼まれても面倒でできないと思う。

お寿司ちゃんに私は会ったこともないし、どんな女の子なのか全然知らない。でもお寿司ちゃんは、自分の時間を誰かにお裾分けできる女の子だということだけはわかる。それってなかなかできない。どうしても、自分の為に生きてしまう。でもきっと、お寿司ちゃんみたいに生きた方が人生はハッピーだ。

「幸せ」の所在が、自分にあるか他者にあるかは関係なく、ただ「幸せ」っていう現象のことを好きでいられたら、一生のうちに感じる幸福の量はぐっと増える。そっちの方がいいなって強く思う。

でもそれは、誰かの為に涙を流すことよりも難しいかもしれなくて、そんな難しいことを軽々とハッピーに、クラスメイトでもない私のためにもやってのけるお寿司ちゃん……私もお寿司ちゃんを見習って、人の為に頑張ってみるよ。いつもありがとう。