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料理人・野村友里の棚。「年代も造形も千差万別な器が集う“感性の棚”」

写真家や陶芸家など、プロフェッショナルたちの自宅やアトリエの棚には、それぞれの専門分野の真髄が見え隠れする。棚板の素材や寸法にも職種ならではの理由があり、棚に並ぶ多種多様な道具から、創作の軌跡が見えてくることもある。いつもは目を向けられることのない、働くプロの棚を紹介。

photo: Keisuke Fukamizu / edit: Kazumi Yamamoto

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年代も造形も千差万別な器が集う“感性の棚”

「母の食器棚は、それはもうビシッと整理されていて合理的で見事でした」と娘。自然な流れで母と同じ「食」に関わる仕事を選んだ娘、野村友里さんの食器棚は、なんというか、もうちょっと「自由」だ。

自然光がたっぷりと入る白を基調としたリビングに置かれた2つの食器棚。背の低い方はダイニングテーブルの横に位置し「ゲストが来たときにすぐに取り出せる食器類が入っています。上はグラス類、中段はスープ皿と取り皿、下は大皿、とざっくり分けて」いる。

西山芳浩、辻和美や小野哲平、宮城正幸といった「ピンときた」作家の器にヴィンテージの〈アラビア〉やフランスのアンティーク皿も交じる。形も千差万別だ。シンプルを基本に、自ら考案した調味料や工夫でオリジナリティを創り出す。そんな野村さんの料理にどこか通じる“感性の棚”だ。

ガラスの扉があるとすぐに取り出しにくそうで、職業柄意外だと伝えると「ガラスが一枚あると、写真立てのように大切にしている気がします。あと外の景色がガラスに映ったりするのを見ると、日常から離れてふっと肩の力を抜くことができるんですよ」。

背の高い方の棚の中は、お茶の道具や貴重な器が占める。「器に限らずですが、いいものは存在感がある。その“気”を放っていてほしいので、いつでも見えるところに置いておきたいですね」

料理人・野村友里の自宅の食器棚
「取っ手や木の風合いがいい味に変わっていくのが楽しみ」な棚。上段にお茶事に使う道具がしまわれている。マダガスカルジャスミンを飾って。

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