自分のルーツや家族の物語が込められたネクタイの数々
トラッド文化が根強いアメリカ南部出身ということもあり、子供の頃から、プレッピーやアイビーにはよく触れてきました。どちらも、アメリカを代表するファッションスタイルとして知られていますが、当時は憧れの対象ではなく、家庭や地域の習慣や文化に近いものでした。
例えば、大学などのグループに属する人たちを証すユニホームだったり、父から息子へ継承されるものを指したり。だから、日本の若者が熱狂したような、「〈ブルックス ブラザーズ〉の紺ブレを着たい!」といった流行りではなく、もっと家族や仲間とのつながりを表すものでした。
そういう文化の中で服と接してきたので、クローゼットはルーツや家族との関わりを表すもので溢れています。ネクタイはその最たるもの。丈夫だから長く使うとか、かすれた味わいがいいとか、そういうことではなく、物に宿る自分たちの物語を愛(め)でる。そうやって付き合ってきたものだから、自分が選んだ服とも自然と馴染みがいい。