自分のルーツや家族の物語が込められたネクタイの数々
トラッド文化が根強いアメリカ南部出身ということもあり、子供の頃から、プレッピーやアイビーにはよく触れてきました。どちらも、アメリカを代表するファッションスタイルとして知られていますが、当時は憧れの対象ではなく、家庭や地域の習慣や文化に近いものでした。
例えば、大学などのグループに属する人たちを証すユニホームだったり、父から息子へ継承されるものを指したり。だから、日本の若者が熱狂したような、「〈ブルックス ブラザーズ〉の紺ブレを着たい!」といった流行りではなく、もっと家族や仲間とのつながりを表すものでした。
そういう文化の中で服と接してきたので、クローゼットはルーツや家族との関わりを表すもので溢れています。ネクタイはその最たるもの。丈夫だから長く使うとか、かすれた味わいがいいとか、そういうことではなく、物に宿る自分たちの物語を愛(め)でる。そうやって付き合ってきたものだから、自分が選んだ服とも自然と馴染みがいい。

デーヴィッドさんにとって、ネクタイは秋から春まで活躍するワードローブ。遊び心のあるペイズリー(右から2番目)やポロの小紋柄は、カジュアルの装いの時によく取り入れるそう。保守的で真面目なイメージのあるレジメンタルタイ(右端)は、カチッとしたい時に。ところどころ擦り切れたイエロ×ネイビーのレジメンタルタイは、父親の30年来の愛用品を譲り受けたもの。マルチカラーは、学生時代から実兄とお揃いで愛用。昔住んでいたアメリカ南部にあるミシシッピ大学のスクールカラーを配したレジメンタルタイ(左端)など、所有するネクタイには、自身のルーツに関連する数々の物語がある。
ネクタイピンも父から子へと継承される。
愛用する、3つのネクタイピンとピンホールピン。中でもお気に入りだというのが、これまた父親から譲り受けたというゴールドのネクタイピン(上から3番目)。丸い台座には、「M.M.L」とイニシャルが彫られている。
ジャケットのラペルを自分らしく飾るバッジ。
缶バッジは、王道のトラッドスタイルとは異なる、自身のパーソナリティをにおわせる味つけ。好きな音楽や趣味に関するものを収集。
デーヴィッドさんに、ずっと側にあるネクタイをご紹介してもらいます。
ご自身の原点でもあるトラッドの魅力のひとつは「"普遍性"があること」と語るデーヴィッドさん。世界中のファッションスタイルがカジュアル化する今、トラッドという伝統的なスタイルをどのように取り入れるべきか?デーヴィッドさんに着こなしのヒントをお聞きします。