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これが私の“山歩”道 Vol.3 永井玲衣、平野太呂、横山寛多etc.

山や身の回りの自然の中を気持ちよく歩くこと、それが“山歩(さんぽ)”。山はもちろん、郊外の緑地や街中の川辺まで。都会の喧騒を離れて息抜きができたり、その土地の歴史や文化について意外な発見があったり、おいしい水やおやつに出会えたり......今回は、心身共にリフレッシュできる、21の“山歩”道を紹介します。

現在、山の魅力を伝える特設サイト「Mt. BRUTUS」もオープン中!

illustration: Shinji Abe / text: Takuro Watanabe, Asuka Ochi, Ryota Mukai, Emi Fukushima, Koji Okano

都会の間に突如静けさが出現する、非日常な東京・等々力渓谷コース

教えてくれた人:永井玲衣(哲学研究者)

執筆仕事に行き詰まると訪れるのがこのルート。等々力(とどろき)駅に程近いゴルフ橋の階段から等々力渓谷へと下りると、いきなり車の音が聞こえなくなって、異世界にワープしたような感覚になります。川を眺めて歩いたり、石に座ってぼうっとしたりするだけで、日頃の喧騒でかき消されていた自分の声がゆっくりと聞こえてくるようになるんです。私がいようがいまいが関係なく、ただそこにある自然が、自問自答する時間を与えてくれます。

崖を辿り、緑地と水辺に癒やされる東京・国分寺崖線コース

教えてくれた人:平野太呂(写真家)

世田谷区成城と喜多見の間に〈国分寺崖線〉という崖があります。緑地として世田谷区が保全しているので一部立ち入ることができ、天気の良い日や、買ったばかりのトレッキングシューズを試したい時に、このあたりを行ったり来たりしています。野川に注ぐ湧水があるのも魅力で、淡水好きの僕としてはチョロチョロと流れる湧水を見に行くのも癒やし。成城ならではの豪邸も見学可能な施設になっていて、建築を見るのにも面白いと思います。

季節の虫との一期一会を楽しむ、緑豊かな鎌倉・名越切通コース

教えてくれた人:横山寛多(イラストレーター)

昆虫採集が好きで、たたき網を持って定期的に出かけるコースです。特に季節ならではの虫と出会えるのが、途中にあるお猿畠の大切岸。切り立った崖が800m以上続く独特の風景も面白いんですが、以前ここで、美しいアカガネサルハムシを見つけて以来、僕が注視するのは葉っぱの裏。綺麗な空気を吸いながら歩く時間には仕事のアイデアが浮かぶことも多いですが、昆虫がいそうな茂みを見つけた瞬間に一気に忘れてしまいますね(笑)。

自然と歴史の豊かさに触れる、湧水豊富な東京・東久留米コース

教えてくれた人:志藤雄一(〈EAST END WHITE〜coffee〜〉店主)

僕が生まれ育ち今も住む町・東久留米は、湧水が豊富な土地。都内で唯一「平成の名水百選」に選定された落合川と南沢湧水群には遊歩道があり、カワセミやカルガモを見ることができます。また古来、水が豊かな場所に文明あり。市内では縄文遺跡が発掘され、小山台遺跡公園に整備されています。僕の趣味は登山ですが、こうして身近にも豊かな自然、そして歴史を感じられる場所がある。その幸せを噛み締めて、よくこの道を歩きます。

緩やかな林に身を任せ、美しい自然を感じる長野・北八ヶ岳コース

教えてくれた人:柏田テツヲ(写真家)

大好きな北八ヶ岳エリアの中でも、特にこのコースは登りが少なくて歩きやすく、木々の雰囲気がとてもいいので、普段からよく作品を撮りに来ています。歩く時はできる限り何も考えず、環境に身を任せて自然を感じるように。そうすると行き詰まった頭がクリアになり、インスピレーションも湧いてきます。ゴールの山小屋にはおいしい厚切りトーストもあるし、リスも出る。自然は偉大で美しく、感動や癒やし、刺激を与えてくれます。

photo/Tetsuo Kashiwada
苔や藻によって緑色に見える、北八ヶ岳・みどり池。湖畔にはしらびそ小屋が立つ。奥に見えるのは天狗岳。晴れた日の夜には湖面に星空が反射することもあるという。