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作曲家、ピアニスト・中島ノブユキが選ぶ、心を“更地”にしたい時に聴く3曲

星の数ほどあるクラシック曲は、聴き方も楽しみ方も人それぞれ。気持ちを落ち着かせてくれる曲から幽体離脱を促す曲まで?クラシック通27人が極めて個人的なテーマで選んだ3曲を一挙に公開します。

Text: Aiko Iijima, Konomi Sasaki, Saki Miyahara / Edit&Text: Emi Fukushima

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ベートーヴェンのたった百数十小節に
凝縮される鮮やかな感情

曲を生み出す時、心のよしなし事を忘れる必要があります。時間をたっぷり取って、じっくりと。

1の演奏は、自然な水の流れに身を任せて川を下るよう。録音が古いので古色然とした印象に聞こえるかもしれませんが、本質にはキラキラ輝く光を求め、歩みを緩め大きく空気を吸い込むような、自由な精神の歌を感じます。

2は、フランスの作曲家モーリス・デュリュフレが1947年に作曲した混声合唱とメゾソプラノ独唱、バリトン独唱とオーケストラのための宗教曲。天国的という意味ではフォーレのレクイエムと双璧をなすといえるかも。「心を更地に」するためにレクイエムを聴くというのは象徴的ですね。

3は、私にとってベートーヴェンの弦楽四重奏曲全16曲の中でも特別な曲。聴くその時々の気持ちに即して立ち現れる感情、すなわち、パッション、許し、哀しみ、絶望、救い……すべてが、4人の奏者によるたった百数十小節に凝縮されています。

1. 「平均律クラヴィーア曲集」/バッハ

『バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲』
『バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲』演奏:ヴァルター・ギーゼキング(ピアノ)/バッハ名盤1,200シリーズ。ピアニスト、ヴァルター・ギーゼキングの1950年録音盤。ドイツ・グラモフォン/廃盤(CD)。

2. 「レクイエム」/モーリス・デュリュフレ

『デュリュフレ:レクイエム』
『デュリュフレ:レクイエム』指揮:ミシェル・コルボ/歌:テレサ・ベルガンサ(メゾソプラノ)、ホセ・ファン・ダム(バリトン)、パリ・アウディテ・ノヴァ声楽アンサンブルほか/エラート/¥1,000(CD)。

3. 「弦楽四重奏曲第14番 第1楽章《アダージオ》」/ベートーヴェン

『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集』
『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集』演奏:アルバン・ベルク四重奏団/1978〜83年にかけてセッション録音で制作されたベートーヴェン全集。ワーナークラシックス/輸入盤:オープンプライス(CD)。

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