ベートーヴェンのたった百数十小節に
凝縮される鮮やかな感情
曲を生み出す時、心のよしなし事を忘れる必要があります。時間をたっぷり取って、じっくりと。
1の演奏は、自然な水の流れに身を任せて川を下るよう。録音が古いので古色然とした印象に聞こえるかもしれませんが、本質にはキラキラ輝く光を求め、歩みを緩め大きく空気を吸い込むような、自由な精神の歌を感じます。
2は、フランスの作曲家モーリス・デュリュフレが1947年に作曲した混声合唱とメゾソプラノ独唱、バリトン独唱とオーケストラのための宗教曲。天国的という意味ではフォーレのレクイエムと双璧をなすといえるかも。「心を更地に」するためにレクイエムを聴くというのは象徴的ですね。
3は、私にとってベートーヴェンの弦楽四重奏曲全16曲の中でも特別な曲。聴くその時々の気持ちに即して立ち現れる感情、すなわち、パッション、許し、哀しみ、絶望、救い……すべてが、4人の奏者によるたった百数十小節に凝縮されています。