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音楽家・江﨑文武が選ぶ、ポップスの源流にある、画期的なコンセプトを示した3曲

星の数ほどあるクラシック曲は、聴き方も楽しみ方も人それぞれ。気持ちを落ち着かせてくれる曲から幽体離脱を促す曲まで?クラシック通27人が極めて個人的なテーマで選んだ3曲を一挙に公開します。

Text: Aiko Iijima, Konomi Sasaki, Saki Miyahara / Edit&Text: Emi Fukushima

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サンプリングも炎上商法も?
始まりはクラシック音楽にあった!

クラシックってとっつきにくいですが、ちまたで流れるポップスの源流を辿るとクラシックに行き着くことが多いんです。1は、「現代音楽って変でしょ?」という文脈で紹介されがちな「無音」の曲。けれども、楽器音や歌声を構成したものだけが音楽ではないと示した画期的な作品で、ミュジーク・コンクレートの概念と同期しながらサンプリング文化に影響を与えました。

2は同じモチーフを840回繰り返すピアノ曲。サティは生活空間を彩るための音楽=「家具の音楽」を初めて提唱した人物でもあり、本作も「聴き流す音楽」として設計されていたなら、Lo-Fi Hip-Hopの、そして、同一構造の繰り返しとしてはミニマルミュージックの源流かも?

3は格式ある「バレエ」でありながらも、そのアバンギャルドさにパリでの初演は大混乱。バレエ団はこの炎上を予測し、客席にサクラを仕込んでいたとの噂も。「炎上商法」の原点もクラシックにありました(笑)。

1. 「4分33秒」/ジョン・ケージ

『JOHN CAGE』
『JOHN CAGE』演奏:ジョン・ケージ/1974年にイタリアで発売された同盤のオリジナルリマスター音源。52年発表の代表作「4分33秒」を含む全5曲を収録。クランプス/輸入盤:オープンプライス(CD)。

2. 「ヴェクサシオン」/サティ

『SATIE, E.:Vexations(Veen)(840 performances)』
『SATIE, E.:Vexations(Veen)(840 performances)』演奏:イェルーン・ファン・フェーン/約1分間の楽曲を840回弾いた音源が収録されている。ブリリアント・クラシックス/廃盤(CD)。

3. 「春の祭典」/ストラヴィンスキー

『ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》(1921年版)、管楽器のための交響曲(1920年版)』
『ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》(1921年版)、管楽器のための交響曲(1920年版)』指揮:シャルル・デュトワ/演奏:モントリオール交響楽団/デッカ/¥1,600(CD)。

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