1号だけなんて選べない!
「#BRUTUSこの1号」を選んでくれ、とのデジタルチームからのオーダーに対して三日三晩悩みました。でもね、どうしても絞りきれなかったんです...。というわけでここは編集長権限(すみません)、テーマを分けて私の編集者人生を変えた3号を紹介させてください!
まず1冊目は、当時大学生の時に古本屋で見つけた「南米通信」(1984)。大学生の頃、バックパッカーとして世界中を旅していた私は、古本屋に行くと旅に関する本や雑誌を探していました。坂本龍一氏がアマゾン川に浮かぶボートに寝そべる表紙に衝撃を受け思わずページを開くと、そこには見たことのない圧倒的な景色がこれでもかと展開され、ブルータスという雑誌の凄さを目の当たりにした瞬間。当時、一生旅人として暮らし就職しない生き方なんてのを模索していた(それはそれは青い)私だったが、こんな仕事ならやってみたいなと思ったのを今でも覚えています(そしてその時はまだ、マガジンハウスを受けるなんて思ってもみなかった)。
2冊目は「たった一つのホテルがある島へ。」(2000)。その「南米通信」を手に取った時には想像していなかったマガジンハウス入社、そしてまさかのブルータス配属となった私は、当時の編集長に「何がしたいんだ」と問われると、貧乏旅行では行けなかった「南の島に行きたいです!」と答え続け、島の特集を担当させてもらうことに。だが編集長から言われたのは「世界中の島から写真を借りて島カタログを作れ」というもの。「島に行かずに島の特集を作るなんて!」と叫ぶ(まだ青い)私に「取材すればいい特集になるわけじゃない」と断言されぐうの音も出なかった。
ちなみに表紙も、ただの小屋の写真をストックフォトから借りたもの。「取材してない写真を使うなんて!」とこれまた叫ぶ私に「絶海の孤島感を醸し出すことが全てだ」と言われこれまた絶句。そしてこの時、私が出したタイトルは「たった一つのホテルしかない島へ」。編集長からの赤字に「たった一つのホテルがある、って日本語おかしくないですか!」と三度叫ぶ私。編集長は一言「語呂が悪い」と。正しさよりも面白さ。今の自分の雑誌作りの根幹を支える考え方の出発点となった特集。
3冊目は、単純に表紙が一番好きな号、「BRUTUS STYLEBOOK ’83 SUMMER IDEAS」(1983)。初期ブルータスにおけるアートディレクター・堀内誠一さんの凄さは創刊号から迸っているのだが、堀内さんのイラストが私は好きで、なかでもこの表紙はまさにサマーライフな気分が凝縮された美しい表紙だと思っている。
ブルータス1000冊の中でもロゴ位置がいつもと同じ場所にない号は稀だが、全てがこのイラストの気分を活かすためにデザインされたものだと考えると納得。決まりごとなんて面白さを追求するためなら壊したっていい、当時の編集部の自由闊達な雰囲気が伝わってくる1冊。
1000冊の歴史を積んだバスがあなたの街にもやってくるかも
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