坂東祐大が語る、夏木マリ
2017年にニューヨークで『スリープ・ノー・モア』というインタラクティブ型演劇を観劇したことがあって。帰国後、パーカショニストの斉藤ノヴさんのラジオ番組へ出演した際、『スリープ』の話で盛り上がったんです。
日本ではまだ知る人ぞ知る公演だったので驚きましたが、どうやらノヴさんのパートナーで、俳優や歌手として活動する夏木マリさんも『スリープ』に興味を持っていたみたいなんです。その後、夏木さんにもお会いする機会をいただき、大先輩にもかかわらず、オープンマインドで、すぐに意気投合しました。
それから、詩人の文月悠光さんの詩を夏木さんが朗読したものを拝聴したんです。専門外なので個人的な見解になりますが、詩の朗読は言葉だけで景色を立ち上げなくてはならず、感性と高い表現力が求められる。
夏木さんは長くさまざまな言葉と向き合って培われた感性があり、その声質も伴って、詩の世界を再構築されていて。非常に感動したんですよね。
歌も素晴らしいはずだと確信していたところに、なんとプロデュースのご依頼をいただきました。芸能生活50周年を記念したレコードで、若いミュージシャンたちと「東京ブギウギ」をカバーしたいということでした。
ブギウギの歴史は古く、現在のポップミュージックからは非常に遠い。どうしようかと考えた結果、須川崇志さん、林正樹さん、そしてこの連載でもお馴染みの石若駿くんによるバンクシアトリオに、松丸契さん(サックス)と岡田拓郎さん(ギター)を加えた編成に。
ノヴさんにもご参加いただきました。スタジオで夏木さんにも立ち会っていただきましたが、今東京で一番面白い演奏をする音楽家との相性も素晴らしかった。いつまでも刺激を求める、最高にクールな先輩と出会えて、本当によかったと思います。