石若駿が語る、ライアン・スコット
この連載では、共演してみたいと思っている、比較的若いミュージシャンを紹介してきましたが、今回は僕が純粋な音楽リスナーとして大好きなギタリスト兼シンガーソングライター、ライアン・スコットの話をしたいと思います。
最初の出会いはアルトサックス奏者、ジェレミー・ウッデンのリーダー作『Plainville』。この作品が発表された2009年といえば、新世代のジャズマンたちが、ジャズとヒップホップを融合させ、刺激的な作品がたくさん発表されていた時期。
そんな時に聴いた『Plainville』は、そんな刺激とは正反対。フォークやカントリーを交えた、どこか牧歌的なジャズだったんです。新しい動きを夢中で追いかけていた時で、耳が少し疲れていたのか、『Plainville』の穏やかな響きに惹かれました。
あまりに素晴らしいので、参加メンバーを調べていたところ、ギターで参加していたライアン・スコットのソロ作『Smoke & Licorice』に出会った。ジャズギタリストの作品には珍しく、自ら歌も歌っています。ジョニ・ミッチェルやニック・ドレイクなどのように、アメリカやイギリスで発展したフォーク音楽の要素を大切にしているように感じましたね。
楽曲のハーモニーはもちろん、サウンドプロダクションなど、すべてがカッコいい。大好きすぎて、このアルバムしか聴かない時期もありました。ライブを観たいので、来日情報をいつもチェックしているのですが、どうやらいまだに叶っていないようです。
日本では認知度が低いと思うので、どんな音楽か説明すると、例えば、北海道の直線がひたすら続く道をドライブしながら聴くはっぴいえんど。空と海の下、電車に揺られながらユーミンの歌に浸りたい。そんな時にぴったりの音楽。最近、僕も少しバタバタしているので、たまには『Smoke & Licorice』を聴いて、ゆっくり旅に出たいです。