石若 駿が語る、ジョエル・ロス
新作『The Parable Of The Poet』を発表したビブラフォン奏者のジョエル・ロス。26歳という若さにもかかわらず、NYの新世代ジャズシーンの中心的な存在になっています。ベーシストのハリッシュ・ラガヴァン、ドラマーのカッサ・オーバーオールなどの面白い作品には必ずといっていいほど参加している。
音楽的には、コンテンポラリーからフリージャズ、ブルースや教会音楽的なアプローチまで。10代の頃の演奏も、動画が残っていますが、その頃は王道のジャズ。それから短期間で、大きく進化を遂げていることがわかる。
ビブラフォンの演奏方法はさまざまで、マレット(バチ)を交差させて片手に2本持ち、合計4本で演奏するバートングリップや、トラディショナルグリップ、スティーヴンスグリップ、マッサーグリップなどがあります。
演奏方法を見れば「あ、あの人の系譜が好きなんだな」と、流派がわかるんです。ジョエル・ロスの場合は、ミルト・ジャクソンやボビー・ハッチャーソンのような、片手1本持ちの合計2本で演奏する。王道を行っているんだけど、奏でているサウンドはすごく新しく感じさせる。
ジョエル・ロスや、彼ともよく共演するサックス奏者のイマニュエル・ウィルキンスはじめNYの新世代を牽引する若い世代は、それぞれに哲学的な主張があって音楽を作っているように感じる。コンセプトをしっかり持ったうえで演奏しているんですよね。
ブラック・ライブズ・マターやコロナ禍など、現在のアメリカを取り巻く社会問題に対し、自分の考え方や主張を作品に込めているようにも感じる。タイトル、作曲の方法にも盛り込んでいて、アドリブ演奏も、それに基づいて演奏しているように感じる。それが僕より少し下の世代であって完成しているというのは、とても刺激になりますね。