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語る音楽家、語られる音楽家:坂東祐大→フローティング・ポインツ

作曲家・坂東祐大さんが語る、フローティング・ポインツ。

text: Yoshihumi Takeda / coverage,text: Katsumi Watanabe

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坂東祐大が語るフローティング・ポインツ

音楽を聴く時に気にするポイントの一つが「自分にこういう演奏や作曲ができるだろうか?」というところ。稀に自分の音楽的なボキャブラリーの範疇を超えた表現と出会って圧倒されることもある一方で、最近では感覚が近いながらも異なるアプローチを取っている音楽家の作品からも刺激を受けることが多いです。

イギリスのマンチェスター大聖堂聖歌隊出身で、チータム音楽学校でピアノを学んだというフローティング・ポインツは、クラシックと電子音楽をバックグラウンドに楽曲を発表している電子音楽家/トラックメーカー。初めて聴いた作品は、彼のシンセサイザーとファラオ・サンダースのサックス、ロンドン・シンフォニー・オーケストラの共作『Promises』。刺激的な企画ですが、オーケストレーションに既聴感があり少し惜しいと感じました。

しかし、シンセ使いが気になり『Crush』を聴いてみると、シンプルな電子音としての強度が圧倒的で、本当に素晴らしく、ヘビロテしてしまいました。

フローティング・ポインツ イラスト

そんな彼が、宇多田ヒカルさん『BADモード』へ楽曲を提供しています。アルバムの最後を飾る「Somewhere Near Marseilles」はハウスミュージックのビートに、シンセサイザーのコードという超シンプルで、ヒカルさんの声の魅力を生かす構成。シンセ音は簡単な加工が施されているだけにもかかわらず、厳選された純度の高い音を選んで配置されており、互いの個性を生かしつつ、非常にポップ。

新曲「Vocoder」でも、曲の冒頭1分以上、シンプルなシンセサイザーの音だけで引っ張るという斬新な構成で驚かせてくれました。簡素なアプローチに至るまで、おそらく今に至るまで相当複雑なシンセの実験を行ってきたと思いますが、そのへんのプロセスを一度話してみたいですね。

坂東祐大が選ぶ3枚

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