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ダウンロード ジャパンでドリーム・シアターが観たい!武田砂鉄が選ぶ2022音楽フェス

夏の恒例行事となっていた音楽フェスが突然失われた時、その存在の大きさに気づかされた人も多いのでは。音楽が日々の潤滑油なら、音楽フェスは年一のリラクセーション。さあ、戻ってきた音楽フェスで心ゆくまで。

text: Kaz Yuzawa

武田砂鉄が絶対に観たいステージ
DOWNLOAD JAPAN × DREAM THEATER

ハードな激音・爆音を浴びて
“ととのう”夏フェス体験。

ヘヴィメタルのフェスは、どんなフェスよりも飛沫が飛ぶ。叫ぶからだ。接触も多い。激しい音に反応して動くからだ。コロナ禍で家にいた時、それ以前のライブの様子を観賞しながら、「こりゃ、しばらくダメだろうな」と覚悟していた。

ようやく、今夏、ヘヴィメタルフェス『DOWNLOAD JAPAN』が開催される。一体どうなるのだろう。問いかけておいてなんだが、心配はいらない。2006年から17年まで開催されていたメタルフェス『LOUD PARK』に欠かさず参加してきたが、メタルファンはその音楽性と反比例するように、礼儀が正しい。例えば、ゴミ箱がそんなに荒れない。ちゃんと整列する。あくまでも武田調べだが、それなりにあちこちのフェスに出向いた結果である。だから、まだ叫ぶな、まだ接触するなと言われれば、素直に従うはず。攻撃的な音楽をじっくり受け止める。余裕で楽しむに違いない。

ヘッドライナーはアメリカのプログレッシブ・メタルバンドのDREAM THEATER。昨今、音楽の作り手が、SNSとの親和性を意識しすぎる中で、できるだけ短く、わかりやすく、親しみやすくする動きを強めているが、彼らは例外。昨年発売された新作を締めくくる曲は20分23秒。今年のグラミー賞で、彼らは最優秀メタル・パフォーマンス賞を受賞したが、その受賞スピーチで、ギタリストのジョン・ペトルーシは、自分たちの音楽は長すぎる、ギターソロが多すぎると言われてきた、そうやって否定してくる動きもあったけれど、そんな声に耳を傾けなくてよかったよ、と皮肉交じりに述べた。

DREAM THEATERは、以前にも日本で行われたメタルフェス(『LOUD PARK 14』)でヘッドライナーを飾っている。世界各国からやってきた者たちによる激音・爆音を朝早くから無数に浴びた後で、ようやく彼らが登場する。複雑な展開に時折挟み込まれる美旋律、観衆に集中力を強いるプレーは疲労を癒やすような音楽ではない。緻密に組み上げられた音楽を前に体を振り絞るしかない。

サウナには行かないので、このところ、あちこちで聞く「ととのう」という感覚を知らないのだが、ヘヴィメタルフェスは確実にととのう。特にDREAM THEATERはととのう。2020年5月、彼らの日本ツアーは延期になった。その延期公演も中止になった。ようやくやってくる。激音と美旋律、ただひたすら続くこの緊迫の空間を待ち焦がれていた。

Dream Theaterのジェイムズ・ラブリエ
photo:Per Ole Hagen