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女性が少ないのはしょうがないこと?Chelmico・Rachel × 平井莉生が語る音楽業界のジェンダーバランス

「毎年発表される音楽チャートトップ100にランクインする女性アーティストは男性アーティストよりも少ない」という事実から、音楽業界に携わる女性たちとジェンダーギャップについて考え、語り合うライターの平井莉生さん。プライベートでも親交のあるchelmicoのRachelさんを迎えて対談を行った。

photo: Yu Inohara / text: Mariko Uramoto

女性が少ないのはしょうがないこと、なんかじゃない

平井莉生

「ヒットチャートにジェンダーギャップがある」と聞いた時、正直どう思った?

Rachel

フェスの出演アーティストの男女比や現場の女性スタッフを見てなんとなく少ないなとは感じても、実際にどれだけ少ないか、具体的な数字は知らなかったんです。このテーマでパートナーのMamikoと話した時、「実は私はこう思ってる」と打ち明けることで発見があって、もっと知りたい、語りたいって思いました。莉生さんはいつ頃からこういう問題意識が芽生えたんですか?

平井

思想がはっきりしている親の影響か、幼い頃から世論に疑いを持つ姿勢はあったんだよね。でも、異義を唱えると周りから“厄介な人”と思われるかなと声にしない時期もあった。最近は、物を言う女性に慣れてもらわないといつまでも社会は変わらないだろうと思って、あえて思ったことを言うようにしてる。

Rachel

莉生さんが書いた記事やSNSを見ると、「自分もそう思ってた!」と思うことが多くて、勇気づけられたり、安心感をもらえます。

平井

私ももっと勉強しなきゃいけないし、間違うこともあると思うけど、ジェンダーギャップに関しては当事者の女性として発信できることはあるはずだと。でもあっこゴリラさんがインタビューで「当事者じゃない人たちが頑張らないと世界は変わらない」と話をしていて、本当にそうだなって思ったんだよね。

エンタメから前を向く勇気を。当たり前を疑う視点を

平井

音楽業界だけではなくて、政治や経済の世界にも女性の管理職は少ない。インタビューしたYouTube日本代表の仲條亮子さんは、2児を育てる母親でもある。ライフステージが変化することを前提として女性が働きやすい環境はどう作れるか?といった話ができたのも良かった。

Rachel

アツい。そういう人がいるだけで変わると思う。私も一昨年出産したけど、自分ぐらいの規模感のアーティストで子育てしながら活動している人がそんなにいなくて、正直自分の未来が見えづらい。

平井

そうだよね。考えてみたら、私も今仲條さんのことを、“子育てしながら働いている女性”という言い方をしたけど、本当は子供を持つ男性の管理職の人だっているのにそこはあまり言及されない。やっぱり「子育てをしながら働く」と枕詞(まくらことば)を女性につけてしまうのは無意識の性別役割意識があるんだろうな。

Rachel

でも、少しずつ変わっている実感はあります。自分の子供たちが成長した時、ジェンダーギャップが少しでも改善されてたら。

平井

私はやっぱりエンタメの力ってすごいと思うんだよね。小さい頃からいろんなジェンダーの人が出ている番組を見たり、社会問題をテーマにしたコンテンツを見ていたら今の状態に疑問を感じられる。

Rachel

ですよね。私自身勇気づけられているコンテンツがたくさんある。道のりは長いかもしれないけど、業界や性別、年齢を超えて一緒に道を作っていきたい。

平井

そうだね。私は性別に関わらず心や体をすり減らして頑張ることを美化せず、楽しくやりたいことをやれる社会を目指したいな。

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