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音楽とお金。#2 kiss the gambler

ミュージシャンに聞くお金の話。今回のゲストはDIY精神満点な物販グッズが楽しいkiss the gambler。彼女が考える音楽活動で生きる方法とは。

photo: Koh Akazawa / text: Ryohei Matsunaga

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「私が株だったらみんな儲かるのにな(笑)」

BRUTUS(以下B)

会社員の仕事を辞めて、kiss the gamblerとしての音楽活動で食べていくことを意識したのはいつですか。

kiss the gambler(以下k) 

コロナ禍に文化庁の補助金をアーティストが申請できる時期があって、あのときに積極的に考えるようになりました。それでファーストアルバム『黙想』(2021年)を作ってインタビューしてもらったら、たくさんオンラインショップ注文が来て、そこで私の“お金稼ぐスイッチ”が入ったんです。

B

音楽活動を始めたのは2018年で、20代半ばになってからなんですよね。

k

はい。始めた頃からノルマのないライブハウスにしか出ていなかったので音楽活動で収支がマイナスになることはなかったんですけど、一回のライブで数千円では生きていけないので何か物販で売らなきゃなと考えるようになりました。なので、その日のライブの音源をCD-Rにしたり、カセットやTシャツ、ビーズのアクセサリーを作ったりして物販をするようになりました。

B

やりたいことをやるんだから食べられなくて当然、と考える人もいますが。

k

仕事を辞めたところだったので資金が減っていく不安があったんです。せっかくアルバムを作っても、自分で頑張って売らないと誰も買ってくれないと思ってました。あと単純に、オンラインショップの運営がすごく楽しかった。新商品を出すと昔のアイテムも一緒に買ってもらえる。出し続けることが大事だということは、コンビニから学びました(笑)。

B

月にするとどれくらいの売り上げが?

k

だいたい10万円前後くらいでしたね。『黙想』が急に売れた月だけは、会社を辞められるくらいの売り上げがあったので、辞めてよかったと思えるようにもっと稼いでいきたいと思いました。

B

自分のCD以外でのヒット商品は?

k

活動を始めた頃に作ったTシャツを今年の夏に復刻版で出したらすごく売れました。当時は20枚くらいで友達が買ってくれただけだったので。あとは、3冊出しているZINE(『The GAMBLER』)ですね。柴田聡子さんが音楽以外でもいろんなところに文章を書いていることに憧れていたし、坂口恭平さんの“すぐ作って出す”みたいな姿勢も見習いました。

B

かなふぁんが好きなUSインディーのミュージシャンたちのDIY精神も反映されているように感じます。

k

はい。フランキー・コスモスも自分で絵を描いてフライヤーやTシャツを作ってるから真似したかもしれない。

B

大変なこともありました?

k

苦労とかはないんですけど、いろんなグッズを作って売ってるから、ライブハウスの人に「またグッズ売るんですか?」って言われて、ちょっと恥ずかしくなりました(笑)。お金を稼ぐことにめちゃくちゃ執着してるように見えてるんだと思って。何か写真を撮ってるだけで「それも商品にするんですか?」って聞かれたり。

B

何でも現金化するんだ、みたいな。

k

でも、谷口雄さんのトークイベントで、アイアン・メイデンのメンバーの名言「徹底的に目立つ」を知ったので、私も目立っていいやと思うようにしました。

B

稼ぐことは悪いことじゃないし。

k

私も抵抗はそんなにないんです。アートというよりは生きるため。CDだけじゃ生きていけないからグッズは必須です。

B

次にいいものを作るためのお金と考えると、いちばん健全な活動なのかも。

k

今までの収支をエクセルで管理してるんですけど、グラフにしたら最初の何倍にもなっていて。私が株だったらみんな儲かるのにな、って思いました(笑)。

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