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音楽とお金。第1回: DJ/編集者/パーカッショニスト・サモハンキンポー

音楽家に聞くお金の話。第1回のゲストは、サモハンキンポー。2024年の8月、東京・福生(ふっさ)にオープンしたブックストア&カフェ〈Cha Cha Cha Books〉で話を聞きました。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Ryohei Matsunaga

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「福生・昭島のコンテストで、僕の起業案がグランプリを獲ったんです」

BRUTUS(以下B)

ミュージシャンとしてだけでなく、DJとしても多忙ですよね。

サモハンキンポー

DJではだいたい1万円から5万円くらいのギャラをもらってます。バンドでは全然食えないけど、コロナ前まではDJだけで結構やっていけるかもと思えるくらいたくさんやってました。

B

なのに、コロナ禍で事情が変わった。

サモハン

そうですね。あと、自分はバンドとDJ以外に、レコードをプレスしている東洋化成の営業もフリーランスでやってるんです。でも、今はレコードが人気だけど、それもいつまで続くかわからない。やっぱり音楽って水商売ですし。本業の音楽以外にも仕事の柱を作っておきたくなった。バンドメンバーの中でも自分は根本的なところで考え方が商売人の息子だったんです。

B

それが、この店になった。本屋をやりたいと結構前から言ってましたよね。

サモハン

はい。自分でも出版社(焚書舎)やって本を作っていて、それを売る場が欲しいと思ってたから。もう一つは、子供が生まれたし、どうやって育てていくのかを考えたら、やっぱり自分で商売だな、と。でも、手堅い選択をしたはずなのに、業種として沈みかけてる本屋をやるのも矛盾だなとは感じますけど(笑)。

B

階段を2階に上がると右が本屋、左がカフェ。本屋スペースにはレコードやCDも売っています。カフェの内装はレトロモダンかつトロピカル。お酒もあるし、キューバンサンドとかのフードもある。両方の行き来は自由。居心地最高ですよね。

サモハン

この構造は物件ありきでしたけどね。カフェを作ったのは、僕はこれまで音楽でしか人を集めたことがなかったし、本だけで人を集めるのはちょっと難しいだろうと思ったから。人が集まれる場所を作っておきたくなったんです。

B

福生という町を選んだのは?

サモハン

今の福生には、古本屋もレコード店もないんです。だけど文化的な人たちは結構いる。お客さんが本も売りに来てくれるし、「本屋を作ってくれて、ありがとうございます」ってよく言われます。

B

開店資金は結構な額だったのでは?

サモハン

補助金申請を頑張りました。東京都中小企業振興公社の、商店街を活性化させるスタートアップを補助する、みたいな企画とか。結局、開店までに1,000万円近くはかかったんですけど、半分くらいはいろんな補助金で賄えました。家賃が3年間ほぼタダになる補助もあるんですよ。

B

3年間家賃タダ!

サモハン

コロナ禍でやることがなかった頃に、補助金については調べまくってたので、申請については僕の感覚はかなり研ぎ澄まされました(笑)。最初に福生・昭島(あきしま)でコンテストがあって、100人くらいの応募から僕の起業案がグランプリを獲った。条件をクリアするのはかなり狭き門なんですよ。ただ、補助金をゲットする才覚と経営の才覚は別なんで、後者があるかわかるのはこれからです(笑)。

B

ぶっちゃけ1日の売り上げは?

サモハン

今の目標は両店舗で3万円。先月は20日営業で売り上げ40万円くらいでした。コーヒー1杯500円で1日2万円稼ぐのってすごく大変だし、DJのギャラってすごくよかったんだと気がつきました。でも、これからは街やストリートに根づいてダイレクトにお金を稼ぐことをシンプルにやってみたい。

ただ忙しくなればいいんじゃなく、あくまでグッドミュージックを柱に置いて心地よく。本屋の方にもカウンターをDJブースにして、人が集まっておしゃべりするくらいのちょうどいい案配でラウンジパーティを定期的にやっていく予定です。

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