近代建築の名作に新たな息吹
京都市京セラ美術館(京都/京都市)

日本で現存最古の公立美術館がリニューアル。銅板屋根が印象的な帝冠様式の本館は歴史的意匠を受け継ぎながらアップデート。
現代アートなどを紹介する新館「東山キューブ」、約4,400点に上る収蔵品を公開するコレクションルームを新設。特に上村松園や竹内栖鳳ら京都画壇の画家による近代日本画、京都が生んだ名匠による工芸作品は唯一無二。中央ホールや日本庭園、カフェなどの無料スペースも増え、アートをより身近に感じられるように。
優れた数寄者蒐集(しゅうしゅう)の名品を愛(め)でる
藤田美術館(大阪/大阪市)

明治期に活躍した経済界の重鎮・藤田傳三郎とその嗣子(しし)によるコレクションを収蔵展示。藤田家の蔵を利用して1954年に開館した旧美術館の建物を2022年にリニューアルし、かつて邸宅の敷地だった公園と垣根なくつながる施設にした。
扉や鎧戸(よろいど)など館の随所に用いられた蔵の部材からも、積み重ねられた歴史を感じられる。抑えた照明、黒い壁の展示空間に浮かび上がる収蔵品は約2,000点。《曜変天目茶碗》などの国宝9件と重要文化財53件を含む。
伊丹市内5つの文化施設を統合
市立伊丹ミュージアム(兵庫/伊丹市)

柿衞(かきもり)文庫、市立美術館、市立工芸センター、市立伊丹郷町館、市立博物館の5つの施設を統合し、2022年に開館。複数の建物で構成されるため、屋根の形状や壁面の位置を揃え、意匠に統一感を出して歴史的な町並みと連続性を持たせている。
江戸時代に建てられた2つの町家を見学できるほか、6つの展示室では美術・工芸・俳諧・歴史などの展覧会を開催。旧美術館の約9,000点の美術作品資料と、旧博物館の郷土資料約16万点などを収蔵している。
震災遺物の展示を通して防災を学ぶ
熊本地震震災ミュージアムKIOKU(熊本/南阿蘇村)

2016年の熊本地震の教訓を後世に伝え、大規模地震災害に備えるため、23年に開館。熊本県で整備を進めている、県内各所の震災遺構などを活用した回廊形式のフィールドミュージアム〈熊本地震 記憶の廻廊〉の中心的な役割を果たす。
震災遺物の展示や映像、写真、各種プログラムを通して、地震発生のメカニズムを知り、防災について学べる。ブーメランを組み合わせたような独特の形状の建物は、大西麻貴+百田有希/o+hが設計した。
2025年も続々新しいミュージアムがオープン!
鳥取県立美術館(鳥取/倉吉市)
2025年も日本各地で様々なミュージアムが開館した。〈鳥取県立美術館〉は、県の決定から10年がかりで待望の開館だ。建築は槇総合計画事務所が担当し、「OPENNESS!」というキーワードを掲げ開かれたミュージアムを目指す。

霞会館記念学習院ミュージアム(東京/目白)
学習院大学の〈霞会館記念学習院ミュージアム〉は、学内にある前川國男が設計した図書館を博物館施設へとリノベーションし、25年3月に開館した。大学には、1975年に開館し、皇族・華族にゆかりの品をはじめ、美術品や歴史資料25万点を超える収蔵品を誇る史料館があり、その貴重な品々が展示・公開、保存される。

直島新美術館(香川/直島町)
そして、香川県直島の新たな顔になりそうなのは、ベネッセアートサイト直島で10番目の安藤忠雄設計となる〈直島新美術館〉である。ロゴデザインは祖父江慎が担当した。蔡國強、村上隆、ソ・ドホら、アジア地域出身の作家の代表作やコミッションワークを中心に展示。展示以外にも島内外の人々が参加できる様々な交流プログラムを予定している。
