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村上小説の妄想食卓「調教済みのレタスとスモーク・サーモンのサンドイッチ」

きりりと角の立ったサンドイッチ、ぴったりのタイミングでゆで上がるパスタ、グラスに注がれるウイスキー……。そそる「食」のシーンもまた、村上作品の魅力だ。印象に残る名シーンをぎゅっと詰め込んだ食卓はどんな風景になるのだろう。時代背景や前後の文脈をじっくりと読み込んで具現化した「妄想食卓」へようこそ。

Photo: Satoshi Nagare / Styling: Tomomi Nagayama / Cooking: Shizue Ota / Text: Sawako Akune / Edit: Masae Wako

『ダンス・ダンス・ダンス』上

「そろそろ昼飯を作ろうかなと思ってたんだ。ぱりっとした調教済みのレタスとスモーク・サーモンと剃刀の刃のように薄く切って氷水でさらした玉葱とホースラディッシュ・マスタードを使ってサンドイッチを作る。紀ノ国屋のバター・フレンチがスモーク・サーモンのサンドイッチにはよくあうんだ。うまくいくと神戸のデリカテッセン・サンドイッチ・スタンドのスモーク・サーモン・サンドイッチに近い味になる。うまくいかないこともある。しかし目標があり、試行錯誤があって物事は初めて成し遂げられる」

「調教済みのレタスとスモーク・サーモンのサンドイッチ」

渋谷のアパートに住む主人公は、日々の買い物は青山の紀ノ国屋で済ませているようで、作中に紀ノ国屋の名前が幾度も登場。この高級スーパーで売られるぱりっと新鮮な野菜を“調教済みの”と表現しているのは、さすがの描写力。理想のサーモンサンドイッチとして言及されている神戸の〈トアロードデリカテッセン〉のサンドイッチに倣って、耳は落とさずサーブ!