『ダンス・ダンス・ダンス』上
「そろそろ昼飯を作ろうかなと思ってたんだ。ぱりっとした調教済みのレタスとスモーク・サーモンと剃刀の刃のように薄く切って氷水でさらした玉葱とホースラディッシュ・マスタードを使ってサンドイッチを作る。紀ノ国屋のバター・フレンチがスモーク・サーモンのサンドイッチにはよくあうんだ。うまくいくと神戸のデリカテッセン・サンドイッチ・スタンドのスモーク・サーモン・サンドイッチに近い味になる。うまくいかないこともある。しかし目標があり、試行錯誤があって物事は初めて成し遂げられる」

「調教済みのレタスとスモーク・サーモンのサンドイッチ」
渋谷のアパートに住む主人公は、日々の買い物は青山の紀ノ国屋で済ませているようで、作中に紀ノ国屋の名前が幾度も登場。この高級スーパーで売られるぱりっと新鮮な野菜を“調教済みの”と表現しているのは、さすがの描写力。理想のサーモンサンドイッチとして言及されている神戸の〈トアロードデリカテッセン〉のサンドイッチに倣って、耳は落とさずサーブ!