Cook 2021.10.21 Cook 料理する 2021.10.21 村上小説の妄想食卓「あの頃の東京のトマトソース・スパゲティー」 きりりと角の立ったサンドイッチ、ぴったりのタイミングでゆで上がるパスタ、グラスに注がれるウイスキー……。そそる「食」のシーンもまた、村上作品の魅力だ。印象に残る名シーンをぎゅっと詰め込んだ食卓はどんな風景になるのだろう。時代背景や前後の文脈をじっくりと読み込んで具現化した「妄想食卓」へようこそ。 Photo: Satoshi Nagare / Styling: Tomomi Nagayama / Cooking: Shizue Ota / Text: Sawako Akune / Edit: Masae Wako 連載一覧へ 『ねじまき鳥クロニクル』第2部 僕は鍋に水を入れてガスの火をつけ、それが沸騰するまでにFM放送を聴きながらトマトのソースをつくった。(略)オリーブ・オイルを熱してにんにくを入れ、そこにみじん切りにした玉葱を入れて炒め、玉葱に色がつきはじめた頃に、あらかじめ刻んで水を切っておいたトマトを入れた。何かを切ったり炒めたりするのは悪くなかった。そこにはたしかな手応えがあり、音があり、匂いがある。 鍋の湯が沸くと塩を入れ、スパゲティーを一摑み入れた。そしてタイマーを十分にセットし、流しの中の洗い物をした。 「あの頃の東京のトマトソース・スパゲティー」 今や日本人にもすっかり馴染み深いトマトソースのパスタだが、日本に本格的にイタリアンが広まったのは1980年代半ば。『ねじまき鳥クロニクル』はまさにその頃の東京が舞台で、都市生活者らしい、しゃれた料理をしていたのがわかる。そんなところから〈Alessi〉のトング、〈ラゴスティーナ〉社の《パスタロボ》、〈バリラ〉社のパスタと、すべてイタリア製を揃えた。 連載一覧へ 関連記事 次の記事へ 村上小説の妄想食卓「鼠の別荘で作る冬ごもりの料理」 Cook 2023.3.26 #小説 #料理 #村上小説の妄想食卓 #村上春樹 デイリーブルータス #026 村上小説の食卓 村上小説の妄想食卓「調教済みのレタスとスモーク・サーモンのサンドイッチ」 村上小説の妄想食卓「鼠の別荘で作る冬ごもりの料理」 Videos 動画 【11/15発売】沁みる映画。 Videos 動画 【11/15発売】沁みる映画。