ヤマノミの少女が
出産したばかりの我が子を
精霊として森へ返すシーン。
行ったことのない場所や、会ったことのない人々の生活に興味があり、ドキュメンタリー作品を観る機会が多いです。なかでも、NHKスペシャルの『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』は、鮮烈に記憶に残っています。
取材班は、現代文明と完全に隔絶した生活を送る“最後の石器人”と呼ばれるヤノマミに密着し、彼らの生活を記録していきます。ヤノマミは「森で生まれて、森を食べ、森に生きる」という考え方のもと、森の精霊と対話しながら生活している。
彼らの習慣の中では「子供が生まれた場合、家族として迎え入れるか、精霊として森へ返すか」を選択しなければならない。森へ返す方法は、母親が自ら赤子を殺め、シロアリの巣へ入れ、アリに亡骸を食べさせた後、巣ごと焼き払うというもの。
母親は思い悩んでいるようにも見える半面、精霊として森へ返すことは当たり前のことであるという決然とした表情にも感じられます。
残酷に思えますが、ヤノマミにとっては自然な選択であることも衝撃でした。田中泯さんの「この部族は自らをヤノマミと呼ぶ。それは人間という意味だ」という最後のナレーションに“人間を拝見させていただきました”と背筋が伸びる気持ちになりますね。