夢のような話を現実のものにしてくれる、無人島売買専門の不動産屋さんがある。名前はアクアスタイルズ。代表の佐藤政信さんはもともと、米航空会社に勤務していたが、リゾート好きが高じて商売を始めたのが25年前。
途中、ドイツやカナダの会社でノウハウを身につけて独立。当時から今に至るまで、海外の無人島も販売するが、日本の無人島を売り始めたのが約20年前。最初の5年は鳴かず飛ばずだったが、少しずつ売れ始め、これまでに20以上の島を売買してきたという。佐藤さんに詳しく聞いてみた。
実際に売られているのはどんな島?
「日本には一島所有ができて、平らな場所があり、上陸できる島となると、200程度だと思いますね。さらに所有権が複数にわたる場合はややこしくなるので、市場に出回る不動産は自ずと希少価値が高い取引となるんですよ」
それでは、アクアスタイルズが管理している、現在、売られている無人島を3例ほど見てみよう。
黒島(島を丸ごと)
¥180,000,000
熊本県天草市有明町大浦3983-1
約20,940平米(約6,345坪)
熊本の天草。対岸には遠く雲仙岳を望む沖合の孤島。島の海抜は高いところで25メートルくらい。150年前から人が住んでいたため、島全体は開墾されている状態だそう。良質の釣り場としても価値が高く、タイ、チヌ、タコをはじめ魚種多様な釣りが通年で楽しめる。島の北側ではアワビやナマコが獲れるほか、潮が引いたら色鮮やかな海藻も採取できる。火山帯ということもあり、周囲の島や土地には温泉もあるため、ボーリングで温泉を掘り当てるというロマンも残されている。
小筵島(島を丸ごと)
¥4,5000,000
三重県志摩市志摩町片田
約19,800平米(約6,000坪)
佐藤さんも久しぶりにテンションが上がったという最新の出物がこちら。三重県の英虞湾に面した一島買いの無人島。真珠や青のりの養殖などが盛んなリアス式海岸で、海自体は波もなく静か。環境省の指定する伊勢志摩国立公園内で、第2種特別地域にあたるため、建築作業や農林漁業活動に関しては、届け出が必要。比較的フラットで、緑も多く、上陸できるポイントもあり。近隣からのアクセスを考えても、多くのポテンシャルを秘めた島だ。都心のちょっとしたマンションくらいの値付けというのも魅力。情報は随時アクアスタイルズのHPで更新される予定。
成ヶ島(島の一部)
¥22,500,000
兵庫県洲本市由良町由良字須加1719番
約8,872平米(約2,684坪)
こちらは大きな無人島の一部区画の販売。それでも8,872平米とかなりの大きさ。淡路島に寄り添うような立地で、兵庫県洲本市の由良港至近でアクセスも抜群だ。とはいえ、ウミガメが産卵したり、珍しい植物が生える国定公園法第2種の自然環境保護区なので、建築は難しい。しかし、そこはアイデアで解決しよう。テントを設置してグランピングなどをすることは可能。釣り、水遊び、敷地内の砂地でバギーをするなど、アウトドア遊びの天国だ。おそらく国内最安の無人島。お年玉として「ブルータス の記事を見た!」で、破格の¥19,800,000に値下げしてくれるそうだ。
個人であれば十分快適に楽しむことができる。
「国定公園に属する島も多く、例えばリゾート開発など、重機が入るような工事を伴う大規模計画は、法律的な制約も多いので、環境省の許可がなかなか下りないなんてこともありますね。また、地元の同意を集めるのも難しくなってきます。ですから法人の場合はグランピング施設に、なんて話が多いですね」
しかし、個人ならもっと可能性は開けるという。
「本格的にインフラを整えて大きな家を建てるんじゃなければ、そこそこ快適に過ごせますよ。ソーラーパネルや発電機、雨水タンクの設置なんてわけないし、最近では海水を真水に変換する装置なんかもありますから。有人島だった場所は井戸があるケースも多いです。でも、扱っている島はたいてい本島に近いですから、水や食糧なんかは無くなれば買いに行っちゃえばいいんですよ」
んー。無人島と聞くと、サバイバルを想像してしまいがちだが、もっと気軽に、日常の延長でいいのか。現実に売買している人がいることを知ったら、無人島テレワーク計画を立てたくなってきた。