VR機器の進化によって、どこでも限りなくリアルな映像体験が可能になったわけだが、視聴覚を拡張する特別な体験を、機器を使わないで味わえる映画を紹介したい。
特注ゴープロカメラを役者が装着し撮影された『ハードコア』は、いわゆるFPSゲームさながらに、ほぼ全編が主観ショットだけで構成されている。要は、主人公の一人称視点と完全シンクロした映像が展開する、没入感あふれるエクストリームな体験型アクションムービーなのだ。
実はスパイク・ジョーンズが20年前にこの視覚効果を利用した逸品を作っていた。それが『マルコヴィッチの穴』。
オフィスの壁に開いた不思議な穴に吸い込まれると、なぜか名優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に15分だけ入ってしまうという奇抜な設定。何と劇中にはマルコヴィッチ本人も登場し、穴に飛び込んで、自分の頭の中身に驚く羽目に!
この脳が(VR以上に)攪乱される体験は、「映画という神秘の穴」の奥深さを感じさせることだろう。
『ハードコア』
サイボーグとなった主人公が、謎の組織に誘拐された妻を救い出そうと戦いを挑む。男の一人称視点のみで描いた新感覚アクション。
『マルコヴィッチの穴』
『シェルタリング・スカイ』などで知られる名優ジョン・マルコヴィッチの頭の中へと繋がる穴をめぐる不条理コメディ。