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デザイナー・大島依提亜がもう一度観たい映画と、その理由。『イメージの本』

観るたびに新たな発見があったり、人生の変化に気づいたり。名作とは、何度観ても、また観たいと思わせてくれる作品のことかもしれません。映画を愛するデザイナー・大島依提亜さんが繰り返し観る、人生の伴走者ともいうべき一本とはどんな映画なのでしょうか?

text: Keiko Kamijo

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何度観ても覚えられない=新鮮なシーンの連続だから

まず、ゴダール映画が難解だといわれる理由の一つがストーリーのなさ。過去作では、俳優によって物語らしきものが語られることもありましたが、この作品はほとんど物語の要素がありません。タイトル通り、とにかく膨大なイメージが怒濤のごとく押し寄せる。そんな感じです。

過去の映画や映像、文章や絵画からの引用が並ぶのだけど、名画のワンシーンだけではなく、画質が悪いビデオのような映像をさらに加工して、強烈なコントラストになっていたり、白飛びしていたり、ものすごく美しい映像が出てきたり。すべてのシーンに度肝を抜かれるし、セレクトも秀逸で、絵的に全然飽きない。

それはYouTubeやSNSをダラダラ見てるのに近い感覚のようにも思えて、ゴダールはインターネット時代の映像感覚を独自の手法で表現したのかと思えば、親近感が湧く。

ゴダール自身が語る言葉の内容や映画の意味を深めていく見方もあるけど、それがわからなくたっていい。何なら途中から観ても、寝てしまっても、倍速で観たって大丈夫。好きな本をたまにパッとめくるように、自分なりに再編集したゴダールの映画が楽しめる。何度観ても新鮮で、全部のシーンがハイライト、こんな映画はほかにないと思います。

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