プラピが体現するおじさんの哀愁に笑い泣き
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
劇場公開時に何の気なしに観た一本でしたが、全編通してゲラゲラ笑いながら、中年の孤独を感じて目頭が熱くなりました。2023年、自分が還暦を迎えた時にブラッド・ピットと同い年だと知りました。その目線で彼が演じるクリフを見ると、輝かしいハリウッドの世界にいながら日の目を浴びないスタントマンであり、絶妙にダメなおっさん感が滲(にじ)み出ている。可笑(おか)しみと同時に共感に似た感情を抱かずにはいられませんでした。

特にそれを感じたのは、クリフが若い女性と車中で対峙するシーン。ムードがある中で口説かれてはいるけれど、単純に考えてねずみ講の勧誘みたいなトラップを仕掛けられているわけで。もちろんクリフも、「自分なんかが本当に口説かれるわけがない」とわかったうえで、駆け引きをしている。
同じように、ディカプリオが演じるかつてのスター俳優リックが、孤独にプールでマルガリータを飲むシーンとかも、カッコ悪さと哀愁がすさまじい。クリフとリックの孤独感が“笑える”と同時に、おじさんと社会との距離感の遠さに切なさを感じましたね。
年を重ねると、華やかな世界の裏にも暗い世界があると知り、物事の良い面と悪い面を冷静に俯瞰できるようになる。本作が描く60年代アメリカのカルチャーも、青春時代には憧れていたけど、カッコいいだけじゃない影の部分が垣間見えるんですよね。自分の中の捉え方の変化にも、しみじみ感慨深くなる映画です。
