やるせない出来事に対する誰かの願いを想像
愛してるって言っておくね
短編映画は日頃から話題作を中心によく観ていて、ピクサーの長編と同時上映される短編アニメーションはBlu‒rayで頻繁に観返すほど好きです。読み切り漫画の編集を担当することも多いので、短い物語で心を摑(つか)む方法の参考になることもあるんですよね。
この作品は、たった12分のショートストーリーです。学校で起きた銃乱射事件で娘を失った夫婦の物語。自分にも子供がいるので、こんなことが起こったらと考えると途方もない恐怖を感じますし、失ってしまった悲しみは到底乗り越えられるとは思わない。
日本は銃社会ではないけれど、やるせない事件は多々起こりますよね。加害者が抱える何かしらの怒りや悲しみが暴力を引き起こす一歩手前で、この社会には何か最後の心の拠(よ)りどころがあってほしいな、と観賞後に改めて考え込みました。
アニメーションだからこそできる表現も多く、被害者の両親を包み込む温もりや「もう二度とこんなことは起きてほしくない」という作り手の強い願いが感じられ、強く心を揺さぶられました。物語が現実の問題に対してできることはそう多くない。それでも、暴力ではない何かに人を繫ぎ止める強度はあると信じています。