顔面蒼白のカッパの男、下山した夜に金縛り…。ベテラン登山者が語る、山で本当にあったコワイ話

なんかさ～、ここ数年で山に登る人が増えた気がしない？

コロナの間は街で遊べなかったから、その影響ですかね？

こんなこと言うと上から目線っぽくてアレだけど、コワイ光景をよく目撃するんだよね、最近……。

もしかして初心者ハイカーのヒヤリ・ハットな光景ですか？

その手のコワイ話なら、いっぱいありますよ。題して夏の低山で出会った「赤いカッパの男」。

タイトルが怖いわ（笑）。

よく晴れた日曜日。丹沢で人気の大山に登ったのね。山頂で休憩してたら、フラ～、フラ～って、男の人が近寄ってきたの。青白い顔して、顔中びっしょり濡れてて……。「水を……ください」って。

てかそれ、脱水症状だろ！夏の晴れた日にカッパ着て歩いたら、そりゃそうなるわ。

なんでそんなことを？

テレビの登山番組とか雑誌とか、みんなカッパを着て登っていたから、デフォルトだと思ったって。

あ、でも登山とかアウトドアの広告では、おしゃれなジャケットを着ていることが多いかもしれませんね。その方が登山っぽく見えるし、かっこいいので……。

メディアが作ったイメージは無意識に刷り込まれるからな。

山での体温調節って意外と難しくて、脱いだり着たり、こまめにやらないといけない。でも初心者はそのタイミングがわからなかったり、面倒くさがったりするから、気づいたときには脱水症状とか低体温症になったりしやすいですね。

そういえば友達が夏の登山中に、いきなりすごい悪寒を感じたって聞いたことがあります。それはもう呪いレベルだって。

今度は何だよ（笑）。

速乾性の半袖Tシャツを着て、風が出たらウインドブレーカーを着て防寒して、バッチリ体温調節していたそうなのですが……。

わかった、それ下着だろ！

ご名答！彼、初登山に備えて服を揃えたのですが、下着だけは予算オーバーで、某量販店の安い化繊のパンツを穿いて行ったとかで。

それは汗冷えしちゃったね。下着は一番汗を吸うから、普通の化繊の下着じゃ乾く前にまた濡れちゃう。それでどんどん冷えていく。

アウトドア専用の下着は汗を吸って放出する機能がハンパないからな。その分値が張るけど、そこをケチったらダメなんだよね。

呪い系で言うと山小屋1泊登山のとき、友人が肩が重い、誰かが覆いかぶさってるみたいだって言うんです。しゃがみ込んで。

山小屋泊だから多少は荷物が重いだろうけど、さすがにそれは。

仕方なくちょっと荷物を持ってあげようと思ってバックパックを開けたら、世にもコワイ光景が！

え……⁉

汗拭きシート4つ、制汗スプレー2本、ドライヤーも出てきた。

潔癖性かよ！（笑）

まあでも初山小屋は心配で、あれこれ持っていっちゃうよね……。

山小屋にはたいてい風呂がないから汗拭きシートは正解だな。でも1つでいい（笑）。

みんな、自分が体験したコワイ話ってありますか？

俺は山小屋泊のときに見たよ。夜、星の撮影をしようと30分くらい歩いたの。そしたら暗闇から女のすすり泣く声がして……。

それはリアルにコワイ！

一瞬逃げようと思ったんだけど、よく見ると足があるんだよね。

オバケじゃない（笑）。

その子、日帰りのつもりが意外と時間がかかって、途中で日が暮れたんだって。ヘッドライトは持ってないし、携帯のバッテリーは切れるし、身動きが取れなくなってた。

リアル事故案件ですね。

日帰り登山だとヘッドライトや予備バッテリーを持たない人、多いですよね。日没後は完全に真っ暗になるから、怖かったでしょうね。

ヘッドライトは、どんな登山でも必須。お守り的存在だよね。

私もマジで霊じゃないかって思った体験があります。北アルプスの山中を歩いていたとき、前から四つん這いになってこっちに向かってくるおじいさんが……。

なんだそれ、怖えぇ……。

マジでヤバい！ってなったけどその人もちゃんと足があって。

判断そこなの？（笑）

そのおじいさん、尾根でメガネを谷底に落としちゃったらしく。ほとんど足元が見えないから、手で安全確認しながら下りてきたって。

メガネユーザーは注意だな。

私はコンタクトなのですが、以前登山中に落としたことがあって。予備があったから事なきを得ましたが、それ以来怖くて、2018年に一念発起、レーシックをしました。

コンタクトユーザーも必ずメガネは携行しないとダメだよね。

これは僕自身が初心者だった頃の体験なんですけど、初めて単独で八ヶ岳を歩いたんです。事前に入念に下調べをして、地図のコースタイムを逐一チェックして歩いてたんだけど、どれだけ歩いても山頂に着かないんです。

だんだん天気も悪くなってきて、あれ、もしかして俺、映画とかでよくある“異界への扉”開けちゃった？って思って。パニックになりそうでした。

アホか！

いや、でも単独行のときは、ちょっとしたことで心細くなります。

結局、僕の歩くペースが極度に遅くて、地図の標準コースタイムの倍近く時間がかかってただけで。

本当に怖いのは、そこでパニクって変な道に迷い込んだり、焦って歩いて体力を消耗して行動不能になること。何かおかしいと思ったら、まずは落ち着いて地図を確認。不安だったら来た道を引き返す。

初心者は標準コースタイム1.5～2倍の時間を見ておくのがいい。登山地図の時間には休憩時間が含まれていないので、それも注意。

今のが「消えた山頂」だとしたら、「山で消えた友人」という話を聞いたことがあります。2人で山を歩いていてふと振り返ったら、さっきまでおしゃべりしていた友人が忽然と姿を消していた。

神隠し……ですか？

「おーい！」と呼んだら、登山道脇の斜面にへばりついてて、低山だったからよかったものの、断崖だったらと思うとゾッとします。

もしかしてそれ、ほかの登山者とすれ違ったときに落ちた？

そう。前から登山者が下りてきてすれ違ったらしいんですけど、谷側に立って道を譲ったそうです。

あ～、それは危ない。

山ですれ違うとき、止まって待つ人は必ず山側に立たないとダメ。谷側に立っていたら、万が一歩行者と体が触れたときに落ちちゃう。

ちょっとしたことが命に関わる事故につながるんですよね……。

俺は「コワイ女」シリーズのパート2を話そうか。山から下りて、車を走らせていたとき。薄暗いトンネルをふらふら歩く女がいてさ。マジで目を疑った……。

トンネルは……無理っすね。

で、結局何だったんですか？

いや、わかんない。だって確認しようがないじゃん。

結末わからないのコワイ！

え、それってあれじゃないですか。最終バスを逃して駅まで2時間とか歩くハメになった人。私も初心者の頃、よく「トンネルのオバケ女」になってた（笑）。

コワイからやめろ！（笑）

だって山を走るバスって1日に2、3本っていうこともザラだし、最終バスも時間が早いから。

時刻表チェックは必須！

結構リアルに肝を冷やしたことだと、数年前に丹沢を歩いていたとき、登山道に点々と続く血痕を発見したんです。だんだん血痕の数が多くなって、もしかしてこの先に死体があるんじゃないかって。

ドキドキ……。

しばらく歩くと、登山道の脇におじさんが座り込んでて。よく見たら数匹のヒルがくっついてた。

ある意味本当に恐怖！

丹沢はヒル多いからな～。特に夏の雨の日はヤバい。

おじさん、ヒルがいるって知らなくて、短パンで来ちゃったみたいで（笑）。ヒルに吸血されるとしばらくは全然血が止まらないから、それで大惨事になってた。ペットボトルで傷口を洗って、抗ヒスタミン剤を塗ってあげたけど、心理的なショックが大きかったみたい。

専用のスプレーを使うとか、スパッツを穿くとか、予防策もいくつかあるから注意するに越したことはないね。薬を携行するのも大切。ハチ対策にポイズンリムーバーを持っていくのも忘れずにね。

呪いっぽいやつばっかりでアレですけど、以前友人が、山中に祀られた祠（ほこら）の前を通り過ぎたすぐ後に、頭が割れそうに痛くなったって言ってました。

山の祟り系ですね。

徐々に意識が朦朧としてきて、本当に祟りじゃないかって。

違うな。それ、真夏でしょ。

そうそう、そうです！

その人、結構歩いたわりにあんまり水を飲んでなかったでしょ。典型的な脱水の症状だよ、それ。

そういえば下山途中に山小屋でビールを飲んだって言ってた。

酒まで飲んだんかい！

アルコールには発汗作用と利尿作用があるからねぇ。ただでさえ汗で水分を失いやすい夏の登山では、行動中の飲酒は危険だね。

登山中は喉が渇いたと思ったときにはかなりの水分を失っているから、ちょこちょこ水分補給をするのが鉄則。汗と一緒に塩分も失うから、水とは別にスポーツドリンクを持参するのもおすすめです。

私は夏の日帰り登山でも水とスポーツドリンクを500mlずつ、合計1Lは持つようにしています。

それくらいは必要ですね。

じゃあ僕から、「コワイ女」シリーズのパート3を。昔、ある山を歩いていたとき、夕暮れ時に女の人とすれ違ったの。あれ、なんか変だな……、怖いな怖いな……って、よくわからない違和感を覚えたの。

ここで稲川淳二……（笑）。

何が怖かったの？

すれ違ってしばらくして、アッ！って思ったのよ。その人、山の中なのに真っ白いワンピースを着て、サンダル履きだった。

振り返ったら、そこにはもうその女の姿はなかった……的な？

いや、そこにいた（笑）。「え、お姉さん、大丈夫ですか」って声かけたら、「はい」って元気に答えて。聞けば、登山口の入口付近にある湖を見に来たんだけど、あんまり森が綺麗だから、登山道を歩いて奥の方まで来ちゃったって。

来ちゃった……。

いやいや、ここ登山道だから、その靴と服だと危ないよって。「そっか」って引き返したけど、あんま理解してない様子だった。

まあ、どこまでが観光地でどこからが本格的な山かっていうのは一概に言えないからなぁ……。

スニーカーで富士山に登っちゃう人もいますからねぇ……。

登山道が始まるところにはちゃんと道標（どうひょう）が立ってるから、そこから先は山の装備を持っていない人は原則、立ち入らない方がいい。観光で来てみて、その先に行ってみたいと思ったら、ちゃんと準備をして、思い切り山を楽しんでほしいよ。

よく言った！

それでこそ山男！

いや真面目な話ね、本当に。

じゃあ最後は、私の「山の祟り」シリーズで締めましょう。これは今でも時々あるんですけど……。山に行って帰ってくると、かなりの頻度でその夜、金縛りに遭うんです。夜中に目が覚めると体が動かなくて、男の人の唸り声がする。そのたびに恐ろしくて、もう山に行くのはやめようかと思うほどです。

ふーん。

ユリコさん、山から帰った日、ちゃんとお風呂に浸かってますか？

え、疲れてるのでサッとシャワーを浴びるくらいです。

何年山やってるんだ！

え～。

登山は想像以上に筋肉を酷使するから、たぶん全身の筋肉疲労のせいで金縛りみたいになるんだろうね（笑）。お風呂に入って血流を良くするのがいいよ。その方が筋肉の修復も早くなるって言われているし。あと水分補給をしっかりするのも大切。翌日の筋肉痛も、だいぶマシになると思うから。

確かに毎回ひどい筋肉痛に悩まされてます……。

メンテナンスはしっかりな。

ところで、男の唸り声っていうのは、何なんだろう？

確かに聞こえるんです……。

マジかよ……。

え、これも何か「あるある」的なオチがあるんじゃないの⁉︎

う～ん、わからん……。

不思議としか言えないな。

待って、コワイ！

山は色々なことがあるから。

うむ。それが山だ。

本当に無理なんだけど！