ニセコや白馬をスノーシーズンに訪れると、海外からの来日スキーヤーやスノーボーダーをよく目にする。中でも、欧米の人たちのリゾートの楽しみ方は自由だ。本場ヨーロッパのスキーリゾートを覗いてみると、アフタースキーを含め、いかにカルチャーとして成熟しているかがよく分かる。
2024年2月3日。イタリアのミラノから車でおおよそ3時間、ベルニナアルプスの名峰に囲まれたスイス南東部のサン・モリッツ。この場所で2024FW〈モンクレール グルノーブル〉のショーが行われた。会場には世界中から250人以上のプレスとセレブリティが集まり、ショーを見るだけではなく、スキーやスノーボードを楽しんだり、スノーリゾートの楽しみ方を体験するツアーとなった。
サン・モリッツといえば、2度の冬季オリンピック、4度のFISワールドカップを開催したヨーロッパでも有数のスノーリゾート。街には大小様々なホテル、レストラン、高級ブティックや、ため息の出るような美しい別荘などが立ち並ぶ。スキー場だけではなく、クロスカントリー用のコースも豊富だ。凍った湖上では競馬が行われたり、釣りや散歩を楽しむ人々もいる。
訪れたスキー場コルベリアは、標高約1822mの街から、最高で3056mのピッツ・ネイルまでがつながる。約1100mの高低差の中に、総延長350kmにもわたる広大なゲレンデが広がっている。切り立った周囲の山々を遠くに眺めながら、眼下の湖や街へと降りていく滑降は格別。そのスケール感もさることながら、ゲレンデ内のロッジにあるレストランでは、本格的な料理がサーブされ、またゲストたちも会話や景色を楽しみながら、のんびりと過ごしていた。
サン・モリッツには〈モンクレール グルノーブル〉だけをフルラインナップで揃えた旗艦店が世界に先駆けてつくられた。アルプスの岩肌を表現したような重厚感あふれるエントランスを入ると、店内にはファッションアイテムの他に、スキーウエアやヘルメット、スキー板、スノーシュー、ゴーグル、カラビナまで、本格的な山を楽しむためのパフォーマンスギアが並ぶ。
ゲレンデではインストラクターが〈モンクレール〉のウエアを着用していたり、一家揃って着こなすファミリーもいる。街のスーパーマーケットではレジに並ぶマダムがエレガントに着こなすなど、あらゆる場所で〈モンクレール〉のコックマークを目にした。もちろんブランドにかかわらず、ゴンドラに並んでいる人たちは皆オシャレで、ファッションスナップができそうな雰囲気。欧州のスノーリゾートのレベルの違いを見せつけられた。
本題の〈モンクレール グルノーブル〉のランウェイも圧巻だった。招待されたゲストたちが、高級スノーリゾートで体験したアクティビティやアフタースキーのすべては、このショーを楽しむための序章だったのかもしれない。光と霧に包まれた幻想的な深い森の中に、溶け込むように設営されたランウェイと観客席。ヘッドセットを通してアンビエントな音楽に酔いしれているうちに、やがて遠くから、木々の間を縫うように歩いてくるモデルたち。目の前を通り過ぎるルックの数々は、やがて美しいカラーパレットの集団となり、135名のモデルによる壮大なフィナーレへと結実する。
シグニチャーであるダウンジャケットや、ニットのバリエーション。複雑なキルティングを施したテクニカルウエアや、雪山にふさわしい数々の小物たち……。最高のパフォーマンスとエレガンスを完璧に融合させたコレクションは、ヨーロッパの歴史あるスノーカルチャーをアップデートし、新たなスタイルを提案してくれた。その一部を紹介しよう。
そして、世界中からVIPが集まり、このコレクションを盛り上げた。彼らもまた、ヨーロッパのスノーリゾートを存分に満喫し、ウエアの機能性を確かめたり、コーディネートを楽しんだりしながら、カジュアルな雰囲気の中で滞在を楽しんでいた。