1928年、ドイツの劇作家のベルトルト・ブレヒトと作曲家のクルト・ヴァイルによって制作された戯曲「三文オペラ」。世界各国で100年近く上演され続ける不朽の名作だ。
物語の舞台は好景気と退廃的な雰囲気を纏ったイギリス・ロンドン。そのムードはインバウンド景気や株価上昇の一方で排外主義が浮上し、貧富の差が隠されることもなくなりつつある、現代ニッポンとどこかシンクロする。
救済もモラルもないハードな世界がウケるのがこのご時世だが、『三文オペラ』はその先駆けとも言える作品。殺人・強盗・詐欺が横行する世界を描く本作が炙り出すテーマには普遍性が宿っている。
本作のプロデューサーを務めるのは、著述家、プロデューサーで“おしゃべりカルチャーモンスター”の異名を持つ湯山玲子。クラシック音楽の新しい聴き方を提案する「爆クラ」を主催しコンサートプロデュースを行う湯山が、一筋縄ではいかない作品と、一癖も二癖もある曲者キャストたちをまとめあげる。
演出は、チェーホフやシェイクスピアといった数々の古典作品を現代演劇へと作り替えてきた、劇団「地点」の三浦基。100年近く前に生まれた戯曲の舞台を、欲望渦巻く現在の歌舞伎町へと移し替え、新たな息を吹き込んだ。
衣装には、ファッションパフォーマンス集団“ハプニング(The HAPPENING)”の仕掛け人としてスタイリストの枠を超えた活躍を見せる伏見京子を、ヘアメイクには2022年東京オリンピック開閉会式、パラリンピック閉会式のヘアメイクディレクションも手掛けた冨沢ノボルを迎えるなど演劇ファンのみならず多くのカルチャー好きの食指も動くクリエーター陣が名を連ねた。
キャストを代表しチャラン・ポ・ランタンのももさんから、本作の見どころを伝えるメッセージが届いた。
「三文オペラは“人間の悪いところが全部見える”作品。でも、そういうのってみんな大好きじゃないですか!?裏切りや妬み嫉み、人が目を背けたいところがぎゅっと詰まっていて、そこにクレイジーでぶっ飛んだ歌詞ながら美しいメロディが乗ってくる。笑いあり、涙は……ないかな(笑)。
このお話をいただいた時、“演劇畑じゃない私に務まるのかな”っていう気持ちもあったんですけど、台本を読んだら、誰しもの日常に転がっているような泥臭くて面白い人間模様が描かれていて、“挑戦してみたい!”って思ったんです。
出ている私もそれぐらいの気持ちなので(笑)、観に来てくださる方も、100年前の作品とか、オペラって難しそうと考えすぎないで、へんてこりんな人たちとへんてこりんな音楽をラフに楽しむような気持ちで遊びにきてほしいです。会場が歌舞伎町なことも相まって、現実と非現実が一緒に味わえる、観終わったあとにスカッとする気持ちよさがあるはず!」

