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アフリカと西洋の完璧な融合が感涙もの。『Moffou』サリフ・ケイタ。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.11

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Moffou』Salif Keita(2002年)

アフリカと西洋の
完璧な融合が感涙もの。

サリフ・ケイタの中で一番好きなレコードが『Moffou』で、そのレコードの中でも一番好きな曲が「Yamore」です。
サリフもやはり、1987年にワールド・ミュージックがジャンルとして確立したことで出てきたマリの歌手です。僕はレコードを聴いて一発で、ユニークとしか表現しようがない彼の声にハマリました。

ただ、あの頃出てきたアフリカのミュージシャンというのは、トラディショナルではなく新しい音楽をやりたいわけです。サリフもそうで、シンセサイザーを多用したりして新しいサウンドに取り組んでいました。その気持ちは十二分にわかるんだけれど、でもこれからアフリカの音楽をちゃんと聴こうと思っている僕としては、アフリカの人でなければ出てこないような独特な音楽を聴きたいな、というジレンマがあったんです。そんな思いがやっと叶ったのが、このアルバムです。

このアルバムは2002年の発表ですが、サリフはアフリカでは70年代から音楽活動をしていたし、僕が知ったのは1987年くらいですからそこから数えても15年くらい経っているわけです。だから正直なところ、僕はかなり首が伸びきった状態だったのですが、西洋の音楽とアフリカの音楽を見事に融合させたこのアルバムを聴いて「サリフ、ありがとう!待ってました」と小躍りしたいくらいにうれしかったんです。

そして中でも僕が大好きな、1曲目の「Yamore」は、サリフとカポ・ヴェルデ出身で“裸足の歌姫”の異名を取ったセザリア・エヴォラとのデュエットです。セザリアが生まれ育ったカポ・ヴェルデはポルトガル語圏で、ちょっとラテンに近いまったく違う音楽文化の国です。

加えて、3人の女性コーラスがかなり存在感を発揮していますが、これは僕の印象ではギニアによく見られるスタイルなんです。つまりこの曲は、マリとカポ・ヴェルデとギニアという異なる3つの音楽文化が融合していることになります。さらに西洋も加えれば4つです。これはまさに、サリフにしかできない音楽だし、僕がサリフに期待していた音楽そのものでした。

Salif Keita

CD-1:「Yamore」

サリフ・ケイタとセザリア・エヴォラとのデュエット曲。この歌を聴くと、まさにデュエットするために生まれてきたんじゃないかと思ってしまうほど、2人の声の相性がピッタリで、ホント僕にとっては極楽にいるような時間なんです。この歌を、僕は一生聴き続けると思います。