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ハモンド・オルガンとギターの相性は最高です。『Let 'Em Roll』ビッグ・ジョン・パトン。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.10

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Let 'Em Roll』Big John Patton(1966年)

ハモンド・オルガンと
ギターの相性は最高です。

2年前、鎌倉のあるビストロから、DJ付きのディナーを開きたいというDJの依頼を受けました。話を聞いたらその店のオーナー・シェフがジャズ・ギターのグラント・グリーンが好きで、だったらグラント・グリーン・ナイトにしましょうということになりました。

で、選曲のためにいろいろ聴き直していたときに、グラント・グリーンがサイドメンとして参加している、このビッグ・ジョン・パトンの『Let 'Em Roll』を久々に聴いて、「Latona」がとても印象に残ったんです。

パトンとグラント・グリーンは何枚か一緒にレコードを作っていて、作品によってどちらかがリーダーでもう一人がサイドマンに回るような相性のいい2人でした。

往年の日本のジャズ・ファンにはハモンド・オルガンという楽器はあまり人気がなくて、かつグラント・グリーンのような単音系のファンキーなギタリストも好まれなかったそうです。ところが面白いことに、いわゆるレア・グルーヴ・ブームが起きた90年代以降、彼らのアルバムはむしろジャズ・ファンではない人たちによって掘り起こされ、注目されるようになりました。

僕もパトンを初めて聴いたのは、80年代末くらい。レコード会社のブルーノート担当者から、ハモンド・オルガンのジャズのコンピレイションを作らないかと誘われて、その選曲のために取り寄せてもらった音源の中にこのアルバムが入っていたんです。

僕自身ジャズの専門家ではないので、そのコンピレイション制作、特にライナー・ノーツの執筆が大変でしたが、ハモンド・オルガン奏者をいろいろ知ることができ、タイミングが良かったのか1万枚も売れて、とてもいい思い出です。

Big John Patton

side A-2:「Latona」

ビッグ・ジョン・パトンのハモンド・オルガンのほか、ギターのグラント・グリーン、ヴァイブラフォーンのボビー・ハチャスン、ドラムズのオーティス・フィンチが参加している。オルガンとギターが絡むラテンっぽいグルーヴが心地よい名演で、夏の夕暮れにビール片手に聴きたくなります。