スケートカルチャーに魅了される
モードに転換期をもたらす者たち
スケートボードは、いつでもクールとされるものの一つであり、そして国や年代に関係なく、世界中の若者たちを引きつける。もちろんファッションデザイナーもその一人。
デッキに施されたアートワークやスケーターたちが着る服、それにスケーター自身のライフスタイルそのものなど、その魅力もさまざまだ。
数年前、ジョナサン・アンダーソンのスタジオを訪れた時、彼のデスク周りには、ハーモニー・コリンが手がけたシュプリームのスケートボードデッキが飾られていた。
ハーモニーはラリー・クラークによる『キッズ』の脚本を書いた人物。白のTシャツにバギーパンツを穿いた90年代のニューヨークのスケーターたちの日常を赤裸々に映像化した。
この映画で見ることのできるスケーターのDNAは今、ジェームズ・ジャビアのシュプリームと、プロスケーターのジェイソン・ディルが手がけるファッキング オウサムに受け継がれているが、スタイル自体は大きく変化した。
ファッキング オウサムは、ジェイソン自身がセンタークリースがぴしっと入ったスラックスにタンクトップでスケートするように、シャツのボタンを一番上まで留めたり、時にはスーツでスケートをしたりというスタイルを提案。スケーターファッションもさまざまな方向へ進化を遂げているのである。
一方的にデザイナーたちがスケートカルチャーを愛しているだけでなく、スケーターたちも、自身が着るものにこだわりを持っている。ロンドンを拠点にするスケートボードブランドであるパレスのデザイナー、レブ・タンジュはかつてこう話していた。
「コム デ ギャルソンのシャツを着てスケートするのが俺のスタイルだった。バイトの給料をもらうと、すぐにドーバー ストリート マーケットに行って、ほかの連中が着ていない上質なギャルソンのシャツを買って、ボロボロになるまで着るんだ」。
このレブの一方的だったギャルソン愛も今では、ドーバー ストリート マーケットの10周年でカプセルコレクションを発表するほどの関係性になった。
こうしたことが当たり前のようになりつつある。ストリートが牽引するモードの時代が到来。スケートカルチャーの進出は序章にすぎない。