「水川さんがいると現場が楽しくなる」と共演者がよく話している通り、素顔の水川あさみさんは明るい。壁を作らずどんな役にも挑戦し、近年は監督業にも飛び込んだ。2月にはKERA CROSS第5弾『骨と軽蔑』に出演する。
思い切りのいいイメージがあるが、意外にも「舞台は怖い」と言う。「自分の足りない部分が露わになるような、全裸で立たされているような気持ちになります。求められることにちゃんと応えられるだろうかと」。しかし、昨年久々の舞台出演を経て、少し変化が起きたらしい。
その時々で感じたことを素直に受け入れて
昨年、『リムジン』で、8年ぶりに舞台に出演した水川あさみさん。東京は最前列の観客の顔が見えるような劇場で、地方も数々回った。
「これまで舞台って、毎公演同じタイミング、同じ動き、同じ空気感を作らないといけないと思っていたんです。でも、『リムジン』を経て、ほんの少しの呼吸の違いでも変わる、その違いを楽しむのが生の醍醐味なんだと気づきました」
俳優のコンディションだけでなく、客席の反応も劇場の空気をビビッドに変えていく。
「開演前でさえ、客席の空気が毎日違うんです。天気にも影響されますし、毎公演、お客さんと一緒に舞台を作っているのだなと痛感しましたね」
次の舞台『骨と軽蔑』は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんの書き下ろし。宮沢りえさんや鈴木杏さん、小池栄子さんら主役級の7人の女優が結集する。女性ばかりというと、昨年のドラマ『ブラッシュアップライフ』での軽妙な会話劇が思い出され期待が高まる。
「まだ稽古前ですが、このメンバーで稽古が楽しくならないわけがないと思っています」
水川さんにとっては、これが初のKERA舞台参加となる。
「KERAさんの作品は人間のユニークなところと暗部との両面が描かれて、人物に奥行きがある。個性的なキャラクターが素敵です」
映像ではどれだけ自分の感情を引き出せるか、瞬発力が大事になるが、舞台は時間をかけて役を練り、人物を立体化する。
「映像と舞台では違う芝居の筋肉を使っている気がします。私はまだ舞台経験が浅いので、役に神経が通うようになるまで時間がかかってもどかしい。白目剥きながらやっています(笑)」
昨年40歳になった。これからもその時々で感じたことを素直に受け入れ、目の前のことに全力を注ぐ。その積み重ねの先にどんな50代を迎えるのか楽しみにしたいと笑った。