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作曲家・三宅純が二度と観たくない名画『ポンヌフの恋人』

中毒性が高すぎたり、作り手であるがゆえに嫉妬してしまったり……。映画のプロたちが2度目をためらうほど、強烈な映画体験をもたらす傑作とはなんだろうか。作曲家・三宅純に聞いた、もう二度と観たくない名画とは。

text: Emi Fukushima, Yoko Hasada

純粋で痛々しい2人に感情移入してしまうから

映画は総合芸術。観賞者としては脚本、芝居、画作り、音楽などが総合的に優れた作品に惹かれます。映画音楽はそのバランスの中でいかに機能するかが重要ですね。純粋でエキセントリックな2人が魅力の本作。

彼らが満開の花火の下でダンスを踊るシーンをはじめとし、多くの印象的なビジュアルも心を掴(つか)みます。でもそのピュアさゆえに自傷的な方向へ突き進んでいくさまが辛くて。何度も観るには体力が要ります。同様の理由で『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』も何度も観るのには躊躇(ちゅうちょ)します。

映画『ポンヌフの恋人』
Collection Christophel/AFLO

一方で、実体験とリンクするのが『マラソンマン』。ある歯科医が拷問のために主人公の歯を痛めつけるシーンを観ると、映画の舞台と同じくニューヨークでSっ気の強い歯医者にかかった時の記憶が蘇ってしまって(笑)。とても観直せませんね。