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東京の混ぜるカレー3選〈ガヤバジ〉〈ハングアウト〉〈ヤムヤムカデー〉

大阪のスパイスカレーに南インドの定食ミールス……。カレー界のトレンドを紐解いて辿り着いたのは、“混ぜて食べる”というキーワードだ。そこで“混ぜる”シーンを盛り上げる、気鋭の店を大公開。店主やシェフの混ぜ方解説付き!

photo: Naoki Tani, Yasufumi Manda, Jun Nakagawa / text: Yuko Saito, Kei Sasaki, Neo Iida

ガヤバジ(田原町)

西インドから西浅草へ。
マハーラーシュトラ州のスパイスカレー。

店主の冨永卓見さんとシェフのガヤさんはリゾートバイトで知り合い、大阪で間借りカレーを開いたのち2019年に上京。土地勘のない西浅草に店を構えたところ“西インドカレー”という珍しい味が話題になった。州ごとに言語が違うインドでは、カレーの味も各地で異なる。

ガヤさんが作るのは出身であるインド中西部マハーラーシュトラ州の味。野菜を好んでよく食べ、海が近いのでサメを使うこともあるらしい。辛さ勝負ではない素材の旨味を引き出すコク深いカレーが多く、パンドララッサもベジコラブリも鶏肉や野菜の味わいがしっかり感じられる。まろやかだが、現地では定番のオニオンガーリックマサラでキレも十分。ガヤさんの故郷の味、ご賞味あれ。

東京〈ガヤバジ〉カレー3種プレート
カレー3種プレート 1,200円/①:ベジコラブリ(ジャガイモ、インゲン、パプリカ入り野菜カレー。)/②:バスマティライス/③:スパイスふりかけ(ライスにはナッツとスパイスを混ぜた特製ふりかけを。)/④:ライタ/⑤:マサラエッグ(特製マサラソースをかけたゆで卵。)/⑥:キャベツとチャナダールの炒め物(キャベツとチャナダール(豆)をスパイスで炒めたもの。)/⑦:パトワリ(ヒヨコ豆の粉にスパイスを混ぜて固めたパトワリ。)/⑧:人参のアチャール/⑨:パンドララッサ(パンドララッサ=白い汁。辛さはなく、鶏肉をチキンスープとココナツミルクで煮込んだまろやかな味わい。)/⑩:フィッシュカフリアル(マグロの頬肉を使ったパクチーベースのカレー。)

ハングアウト(大久保)

リトル・カトマンズ@東京の
新星が放つ豆カレー定食。

“混ぜるカレー”といえば、これも外せない。バート=ご飯に、ダル=豆カレーをかける一手から始まるネパールの国民食ダルバート。ネパール料理店ひしめく界隈に誕生するや、その旨さでファン急増中の料理長パンデイさんは、16年のキャリアで培った工夫をちりばめ、自国の皿を作っている。

ネパールならではのハーブ、ジンブーをしっかり効かせた豆カレーをかけるご飯は、パラパラ感と染み込みやすさを考えて3種の米をブレンド。そこに肉のカレーや歯応えよく仕上げたタカリを混ぜて、追い辛味にアチャールをひと混ぜ。レモン汁で酸味を加えたこのトマトのアチャールがフレッシュ感際立つおいしさで、食欲を刺激する。750円でこの完成度は脱帽だ。

東京〈ハングアウト〉ダルバート Aセット
ダルバート Aセット 750円/①:マトンカレー(カレーは、チキン、ポーク、マトンから1種をチョイス。これは、トマトですっきり仕上げたマトン。)/②:ダルカレー(豆はその時々で替わり、これはウラド豆を使用。辛さを抑え、ジンブーを効かせた、滋味深い味わい。)/③:ライス(ネパール、日本、アメリカの3種の米をブレンド。)/④:タルカリ(スパイスをビシッと効かせたカリフラワーの炒め。)/⑤:サグ(辛くない、ホウレン草のガーリック炒め。)/⑥:トマトのアチャール(2種の唐辛子の辛味とレモン汁の酸味が爽やか。)

ヤムヤムカデー(白山)

スリランカ料理マスターが作る、
混ぜるほどに優しい小宇宙。

混ぜるカレー特集で、外すわけにはいかないスリランカ。2019年に店を構えた古積由美子さんは、料理教室で長年、その料理を教えてきたスリランカマスター。現地に足を運び、家庭を訪ね、習得した味をプレートに仕立てる。色とりどりの惑星がご飯をぐるりと囲む小宇宙は、混ぜるどころか、食べるのも忍びないが、「お皿の手前には料理を盛り付けていないので、ここで混ぜてくださいね」と、古積さん。

ガツンとパンチのあるカレーやおかずのモージュと、ひときわ優しい豆のパリップや、油を使わないで作るあっさりした青菜やココナッツのサンボーラなどの副菜が、メリハリを利かせて4~5種。「インド料理とのいちばんの違いは、使う油の量だと思います」。

スリランカ調味料の代名詞のようにいわれるカツオ節、モルディブフィッシュも、ココナッツミルクも、自在に足し引きして素材を立たせる古積流。旨味は加速しても味の濃さは加速しないから、混ぜても、混ぜても、品がいい。

東京〈ヤムヤムカデー〉スリランカプレート 2種盛り
スリランカプレート 2種盛り 1,500円/①:ナスのモージュ(スパイスとココナッツビネガーの酸味が効いた、常温保存できる揚げナスのおかず。)②:ニンジンカレー/③:パリップ(レンズ豆のカレー。ココナッツミルクで煮ることが多い。)/④:パパダン(ウラド豆の粉と小麦粉で作った薄いおせんべい。インドのパパドに比べて、やや厚め。)/⑤:ココナッツのサンボーラ(唐辛子と塩、タマネギをつぶして、ココナッツと合わせ、レモン汁で味つけしたふりかけ。)/⑥:ライス(日本米とバスマティライスのブレンド。)/⑦:青菜のサンボーラ(塩、黒コショウ、レモンで味つけした青菜の和え物。)/⑧:チキンカレー(カレーには、トゥナパハというミックススパイスを使う。これには焙煎したもの。野菜や豆のカレーには焙煎していないものを使うことが多い。)