ガヤバジ(田原町)
西インドから西浅草へ。
マハーラーシュトラ州のスパイスカレー。
店主の冨永卓見さんとシェフのガヤさんはリゾートバイトで知り合い、大阪で間借りカレーを開いたのち2019年に上京。土地勘のない西浅草に店を構えたところ“西インドカレー”という珍しい味が話題になった。州ごとに言語が違うインドでは、カレーの味も各地で異なる。
ガヤさんが作るのは出身であるインド中西部マハーラーシュトラ州の味。野菜を好んでよく食べ、海が近いのでサメを使うこともあるらしい。辛さ勝負ではない素材の旨味を引き出すコク深いカレーが多く、パンドララッサもベジコラブリも鶏肉や野菜の味わいがしっかり感じられる。まろやかだが、現地では定番のオニオンガーリックマサラでキレも十分。ガヤさんの故郷の味、ご賞味あれ。
ハングアウト(大久保)
リトル・カトマンズ@東京の
新星が放つ豆カレー定食。
“混ぜるカレー”といえば、これも外せない。バート=ご飯に、ダル=豆カレーをかける一手から始まるネパールの国民食ダルバート。ネパール料理店ひしめく界隈に誕生するや、その旨さでファン急増中の料理長パンデイさんは、16年のキャリアで培った工夫をちりばめ、自国の皿を作っている。
ネパールならではのハーブ、ジンブーをしっかり効かせた豆カレーをかけるご飯は、パラパラ感と染み込みやすさを考えて3種の米をブレンド。そこに肉のカレーや歯応えよく仕上げたタカリを混ぜて、追い辛味にアチャールをひと混ぜ。レモン汁で酸味を加えたこのトマトのアチャールがフレッシュ感際立つおいしさで、食欲を刺激する。750円でこの完成度は脱帽だ。
ヤムヤムカデー(白山)
スリランカ料理マスターが作る、
混ぜるほどに優しい小宇宙。
混ぜるカレー特集で、外すわけにはいかないスリランカ。2019年に店を構えた古積由美子さんは、料理教室で長年、その料理を教えてきたスリランカマスター。現地に足を運び、家庭を訪ね、習得した味をプレートに仕立てる。色とりどりの惑星がご飯をぐるりと囲む小宇宙は、混ぜるどころか、食べるのも忍びないが、「お皿の手前には料理を盛り付けていないので、ここで混ぜてくださいね」と、古積さん。
ガツンとパンチのあるカレーやおかずのモージュと、ひときわ優しい豆のパリップや、油を使わないで作るあっさりした青菜やココナッツのサンボーラなどの副菜が、メリハリを利かせて4~5種。「インド料理とのいちばんの違いは、使う油の量だと思います」。
スリランカ調味料の代名詞のようにいわれるカツオ節、モルディブフィッシュも、ココナッツミルクも、自在に足し引きして素材を立たせる古積流。旨味は加速しても味の濃さは加速しないから、混ぜても、混ぜても、品がいい。