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ミュウミュウが文芸クラブ〈Miu Miu Literary Club〉を立ち上げた理由

2024年に文芸クラブを立ち上げたミュウミュウ。なぜ“文芸”だったのか。その理由とは。

本記事は、BRUTUS「文芸ブルータス 2025 夏」(2025年8月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

text: Sogo Hiraiwa

読書が生み出す、知のスタイル

イタリア発のこのラグジュアリーブランドは近年、「女性の教育」などのテーマを掲げ、円地文子『女坂』からシモーヌ・ド・ボーヴォワール『離れがたき二人』まで、種々の“課題図書”を設けてミラノの文化施設でトークセッション、朗読、音楽ライブが交差するイベントを開催してきた。

さらに文芸クラブと連動した『Miu Miu Summer Reads』では、初夏の訪れに合わせて世界各地の都市でこのうえなく魅力的なスタンドやポップアップ空間を出現させ、アイスキャンディやアイスコーヒーとともに課題図書を無料配布している。

〈Miu Miu Literary Club〉イベントの様子
©T Space

でもなぜ、文芸なのか。きっかけはブランド創始者のミウッチャ・プラダが数年前に読んだ一本の記事にある。文学研究者のオルガ・カンポフレダがイタリアで過ごした10代の頃を回想するその文章には、学校で教わる文学史上の名作が男性的な視点で選ばれていることへの不満が綴られていた。記事を読んだミウッチャはすぐさまオルガに連絡を取ったという。

『離れがたき二人』『女坂』
今年のLiterary ClubのイベントやSummer Readsで来場者に配布された『離れがたき二人』と『女坂』。特製カバー付き。課題図書はミウッチャのディレクションの下、オルガと話し合いを重ねて選書している。©Jin Yoshimura

伝統的な美的イメージにとらわれない現代女性の精神を体現するミュウミュウにとって、自分だけの価値観を育む読書は、ごくごく自然に推進すべき文化的な営みなのだ。

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