味噌の熟成期間とコンビネーション。
味噌と相性がいいだし、具材、吸い口をツウ2人が提案。太鼓判を押す一杯もご案内。これで毎朝の味噌汁が脱・マンネリ！
まずは味噌汁の基本から
味噌
味噌は、大豆に麹と塩を加えて発酵させた調味料。米味噌と聞くと、米が原料だと誤解しがちだけど、主役はあくまで大豆。米は発酵させる麹の種類で、ほかに大豆麹を使った豆味噌、麦麹の麦味噌がある。
麹と混ぜて発酵・熟成させる期間が、2週間前後から3年以上のものまでさまざまで、同じ米味噌でも熟成期間の長短で色の違いが生まれる。色は大豆や麹に含まれるたんぱく質と糖が反応してできるもので、一般的には寝かせるほど色が濃くなり、旨味も強くなる。
だし
味噌汁の味わいをグイッと押し上げてくれるのが、だしの旨味。熟成期間の短い、淡い色のあっさりとした味噌には、昆布、シイタケといった植物性のだしを。色の濃い、旨味の強い味噌には、その旨味に合わせて煮干し、カツオ節、サバ節など、魚介系のだしを重ねていくとおいしい。だしを引く時間がない時は、本みりんと醤油で代用したり、カツオ節をパラッと振り入れる裏技もあり。
具材
具材から出るエキスもまた、味噌汁の味を決める大切な要素。あっさりとした、色の薄い味噌には、野菜や淡泊な肉や魚を、色の濃い、旨味の強い味噌には、貝や牛肉など、旨味がしっかりある具材を合わせるのが、基本。野菜でも、乾燥させて味が凝縮した乾物や、油分を持つ油揚げなどを使うと、旨味がアップして、合わせる味噌の幅もグンと広がる。お馴染みの具も、切り方を変えると新鮮。
吸い口
汁ものに香りを添えたり、味を引き立てるために、椀によそってから添えるのが、吸い口。春の木の芽、夏のミョウガ、秋冬のユズ皮、そして青ネギやショウガなどが定番だが、実は味噌汁なら意外な食材も吸い口として活躍。爽やかさを添えるハーブ類、香りを添えるスパイスやオイル、辛味を効かせるユズコショウなど。ほんの少しで、季節感を出したり、いつもの味噌汁の表情を変えられる名脇役。
鶏肉と梅で、白味噌雑煮の夏バージョン
味噌：白
京都の西京味噌など、主に関西で造られている米味噌。熟成期間は2週間から1ヵ月程度と最も短く、色白。麹の割合が高いので、塩気は薄く、味は甘め。やわらかく、口あたりもなめらかだ。
だし：昆布
すべての味噌汁のベース。白味噌の味噌汁は、味噌の風味を楽しむものが多いので、味を邪魔しない昆布のみがいちばん。中でも、甘くてまろやかな白味噌には、すっきりしただしが引ける利尻が最適。
具材：鶏肉
肉類でも、淡泊な鶏肉なら好相性。皮目を焼いて、香ばしさを添えるといい。野菜は、イモ類、カボチャなど甘味のあるものが合う。夏なら、パプリカを酒蒸しするなどして甘味を出して加えても。
吸い口：梅干し
白味噌の吸い口は、秋冬のユズ皮がお馴染み。が、ユズ皮に代えて、酸味のある柑橘類や梅干し、大葉などを添えれば、甘さが締まって夏向きに。白のすりゴマを振って、食感に変化をつけても楽しい。
南イタリアが覗く、香ばしい九州の味
味噌：麦
九州や愛媛で一般的な、大豆に麦麹をつけて発酵・熟成させた麦味噌。麹の割合が高く、寝かせる期間も2～4ヵ月程度と短めのものが多いので、味は甘め。麦ならではの香ばしさや、食感が楽しめる。
だし：あご
九州や西日本で造られる麦味噌は、やはり九州で親しまれているあご＝トビウオのだしがベストマッチ。魚だが、雑味が少なく上品なので、甘めの麦味噌に合う。下処理してあるのでそのまま使える。
具材：桜エビ
九州や西日本で造られる麦味噌は、やはり九州で親しまれているあご＝トビウオのだしがベストマッチ。魚だが、雑味が少なく上品なので、甘めの麦味噌に合う。下処理してあるのでそのまま使える。
吸い口：バジル
麦味噌特有の香ばしさがあるので、バジル、イタリアンパセリなど、爽やかなハーブ類とよく合う。また、淡色味噌同様、オリーブオイルも馴染むので、吸い口一つで洋風の味噌汁にも仕立てやすい。
とびきりヘルシーなスープパスタの趣
味噌：淡色
全国的に造られている米味噌。熟成期間が半年から1年未満と短く、具材の色が映える淡い黄褐色のため、近年の主流になっている。麹の割合は高いが、塩分はさまざまで、中辛から辛口のものも多い。だし：昆布
あっさりとした味噌なので、白味噌同様、昆布のみのだしがおすすめ。旨味が足りない時は、利尻に代えて羅臼昆布を使っても。昆布の量は、水の1％が目安で、前の晩に水に漬けておくと手間いらず。
具材：切り干し大根
あっさりとした味噌なので、野菜や鶏肉、白身魚など、淡泊な食材に幅広く使える。乾物もその一つで、戻した切り干し大根の甘味と味噌の甘味が合う。野菜の色が映えるので、葉野菜やトマトを入れても。
吸い口：オリーブオイル
熟成が浅い味噌ならではの、若い、爽やかな香りが、オリーブオイルと相性バツグン。また、ショウガやカボスに加え、香菜などのエスニック食材との相性も良く、多彩な吸い口で、味噌汁が変幻自在。
安定の具材も辛味でいつもと違う一杯に
味噌：合わせ
2種類の麹が入った味噌で、麹を合わせて造ったものと、造ってから合わせたものがある。前者は主に米と麦の合わせ麹。後者の代表は、豆味噌と米味噌を合わせた赤だし。甘辛、旨味のバランスがいい。
だし：煮干し
小魚を煮て干したもので、カタクチイワシ＝イリコが一般的。合わせなど、旨味がしっかりある味噌は煮干しやカツオ節など魚系のだしが合う。雑味や苦味が気になるなら、頭とはらわたを除いて使う。
具材：油揚げ
塩味、甘味、旨味のバランスがとれた味噌なので、どんな具材とも合う万能選手。特に、豆腐、ワカメなど、定番食材との組み合わせでその真価を発揮。油分を持つ油揚げなら、さらに旨味アップ。
吸い口：ユズコショウ
味のバランスがいいので、具材同様、長ネギや青ネギ、三つ葉など、定番の吸い口との相性は文句なし。そこに、ユズコショウやかんずりなどでピリッと辛味を効かせると、王道の味わいに変化がつく。
ごちそう椀が、レモンで夏向けに変身
味噌：赤
東北など、主に寒い地域で造られてきた米味噌。熟成期間は1年前後。以前は塩分が高い辛口が多かったが、近年は中辛のものも増えている。旨味も塩気もあり、味噌汁の味がビシッと決まりやすい。
だし：カツオ節
カツオの身に火を入れて乾燥させカビづけしたもの。カビづけ前の節を削った花ガツオもあるが、旨味の強い赤味噌には、カビをつけて熟成させた枯れ節や本枯れ節の削り節が最適。昆布と合わせても。
具材：サケ
旨味や香りの強い食材と合わせても負けない塩気や旨味を持つので、魚ならサケ、肉なら牛肉がおすすめ。使う味噌の量を減らして、酸味のあるトマトなどと合わせれば、夏向けのすっきりした汁に。
吸い口：レモン
旨味や香りの強い食材と合わせても負けない塩気や旨味を持つので、魚ならサケ、肉なら牛肉がおすすめ。使う味噌の量を減らして、酸味のあるトマトなどと合わせれば、夏向けのすっきりした汁に。
濃厚な味噌汁が、スパイスで洗練の域
味噌：豆
八丁味噌に代表される、東海地方で造られている大豆と大豆麹による味噌。熟成期間は1～3年と長く、黒に近い色で、旨味が強い。大豆特有のコクもあり、長時間煮込んだような、深みのある味。
だし：サバ節
サバの身を乾燥させたもので、蕎麦だしによく使われる、旨味がとても強いだし。これが合うのも、味噌自体の旨味が強い豆味噌ならでは。粗削りとして売っている混合節を、昆布と合わせて使っても。
具材：貝
味噌自体の旨味が濃厚なので、旨味の強いだしが出るアサリやハマグリ、干し貝柱などと合わせて、旨味の相乗効果を狙いたい。デミグラスソースのようなコクがあるので、牛肉と合わせても。
吸い口：スパイス
強い香りを受け止める、しっかりしたコクがあるので、定番なら山椒、変化球ならシナモンやクミンといったパウダースパイスも、違和感なく馴染む。中華料理とも相性がいいので、ゴマ油を入れても。
高谷さん＆岩木さんおすすめの一杯
夏の朝にウマイ味噌汁
（高谷さんおすすめ）淡色の米味噌×昆布×絹サヤ×ミョウガ。
味噌汁は具だくさん派で、熟成が短めの味噌に昆布だしが好きという高谷さん。夏のイチオシは、食感が小気味いい絹サヤとミョウガ。
（岩木さんおすすめ）白味噌×昆布×豚肉×ライム。
冬のイメージが強い白味噌を、夏でも楽しむ岩木さん。焼き目をつけた鶏肉や豚肉に、ライムやレモンの吸い口を添えてすっきりと。
郷土色豊かな具だくさん味噌汁
（高谷さんおすすめ）青森・けの汁。
高谷さんが子供の頃食べていた郷土の味。具はさいの目に切った山菜や根菜。だしは煮干し、味噌は祖母作の辛めの米味噌だったそう。
（岩木さんおすすめ）兵庫・ばち汁。
そうめんの名産地、播州地方の汁もので、具が“ばち”と呼ばれるそうめんの節。ばち自体に塩気があるので、甘めの味噌がよく合う。
