お笑い芸人・みなみかわの日本映画セレクション。悪役に痺れる10本

自分だけの、至高の10本がある。映画好きのお笑い芸人・みなみかわさんに尋ねた、自身のパーソナリティにちなんだ日本映画セレクション。個性的な視点や嗜好に沿って選ばれた、10本を紹介。


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text: BRUTUS

悪役に痺(しび)れる10本

ヒール役が存在することで物語が締まるというのは、広くエンターテインメントの場で言われていることですよね。困難や障壁を生み出す存在がいてこそ、対になる主人公が輝いて、展開が生まれる。その両者の綱引き具合が激しくて、最終的に引力のバランスが取れている作品が好きです。最初から最後まで、ずっと緊張して観ていられますから。

それで言うと『黒い家』は、大竹しのぶさんと西村雅彦さんが演じる菰田夫妻の引きがすごい。特に妻・幸子は、心がないような異様な不気味さがあるうえに、戦闘力もフリーザ並みに高い。強いし、怖いし、物語が進むほどに、悪さが増していくんです。

西村雅彦演じる夫・重徳(左)と大竹しのぶ演じる菰田幸子(右)
『黒い家』
西村雅彦演じる夫・重徳(左)と大竹しのぶ演じる菰田幸子(右)。「高校時代に観て震えました。コメディ的な印象があった2人、ギャップにも脱帽です」(みなみかわ)。KADOKAWA/3,080円(DVD)。©1999「黒い家」製作委員会

一方で主人公・若槻慎二(内野聖陽)も、普通の人が翻弄されるのとは、ちょっと違う。もともとメンタルが強くなかったところに、菰田夫妻に出会って、どんどん追いやられていって……という、両者引っ張り合いの構図がラストまで続く。そういう点でも、見応えがある名作やと思っています。

悪役のキャラクターにもいろいろありますけど、どこかで常軌を逸している部分があって、でも、自分なりの筋が一本通っている。そういうやつには引力を感じて、物語をどんなふうに盛り上げてくれるのか、いつも期待してしまいます。

お笑い芸人・みなみかわが選ぶ、悪役に痺(しび)れる10本

  1. 『陸軍残虐物語』(98分/'63) 監督/佐藤純彌
    鈴木一等兵(中村賀津雄)と共に脱走した犬丸二等兵(三國連太郎)は、上官・亀岡軍曹(西村晃)から受け続けた苛烈なリンチを回想する。軍隊と人間の理不尽、その行く末は。
  2. 『仁義なき戦い』(99分/'73) 監督/深作欣二
    舞台は終戦直後の広島県呉市。組長・山守義雄(金子信雄)率いる山守組の組員となった復員兵・広能昌三(菅原文太)は、組同士の抗争や組内部の闘争に巻き込まれていく。
  3. 『柳生一族の陰謀』(130分/'78) 監督/深作欣二
    徳川2代将軍の跡を継ぐのは、長男・家光(松方弘樹)か次男・忠長(西郷輝彦)か。権力闘争の陰で、柳生但馬守(萬屋錦之介)とその息子・十兵衛(千葉真一)が暗躍する。
  4. 『CURE』(111分/'97) 監督/黒沢清
    奇妙な手口だけが共通する、不可解な殺人事件が連続して発生。刑事・高部(役所広司)は捜査を続けていくうちに、記憶喪失の一人の青年(萩原聖人)の存在に行き当たる。
  5. 『黒い家』(118分/'99)監督/森田芳光
    原作は貴志祐介による同名小説。生命保険会社に勤める若槻(内野聖陽)は、菰田重徳(西村雅彦)とその妻・幸子(大竹しのぶ)の保険金詐欺を疑い、調査を始めるが……。
  6. 『血と骨』(144分/'04) 監督/崔洋一
    梁石日(ヤンソギル)の自伝的小説を映画化。祖国・朝鮮から大阪へと渡り、事業で成功した金俊平(ビートたけし)とその家族の凄絶な人間ドラマを、戦前戦後の時代の変遷の中で描き出す。
  7. 『冷たい熱帯魚』(146分/'10) 監督/園子温
    小さな熱帯魚店を営む社本(吹越満)は、面倒見の良い同業者・村田(でんでん)と仲を深めていく。しかし、村田には恐るべき裏の顔が……。実際の事件を基にしたスリラー。
  8. 『凶悪』(128分/'13) 監督/白石和彌
    3件の未解決殺人事件とその首謀者の男(リリー・フランキー)。獄中の死刑囚(ピエール瀧)の告発をきっかけに、スクープ雑誌の記者・藤井(山田孝之)がその謎を追う。
  9. 『狐狼の血 LEVEL2』(139分/'21) 監督/白石和彌
    前作『孤狼の血』の3年後を描く続編。刑事・日岡(松坂桃李)によって秩序が保たれていた広島の裏社会。“悪魔”上林(鈴木亮平)の出所によってその均衡が崩れていき……。
  10. 『死刑にいたる病』(128分/'22) 監督/白石和彌
    櫛木理宇による長編小説を映画化。死刑囚の連続殺人犯(阿部サダヲ)から「最後の事件は冤罪」と訴える手紙を受け取った青年(岡田健史)が、やがて恐るべき真実に辿り着く。

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