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知識ではなく感性で楽しむ、古着店のような自転車店。初台〈磨屋自転車店〉

かつて誰かが愛用したものは、きっと今、誰かが欲しているもの。バラして磨き、組み直した自転車、2000年前後のファッション、民家や公共空間からの掘り出し物にデザインもの、西洋の木彫まで。ヴィンテージだからこそのクセ強なセレクトショップ、集めました。

photo: Koichi Tanoue / text: Satomi Yamada

中古で仕入れた車体をバラし、すべてのパーツを磨いて再度組み直した自転車を扱う〈磨屋自転車店〉。オーナーである武捨光晶(むしゃ・みつあき)さんのセンスでアレンジした、唯一無二の自転車ばかりが並んでいる。

「まずはお客さんに直感で選んでもらってから、サイズが合っているか、どんな用途で乗りたいかを確認します。必要最低限の情報だけを伝えて、最終的にまたご自身で選んでもらうんです」とは、武捨さん。この年式のフレームにはこのパーツを付けて……といった小難しい知識は脇へ置き、武捨さんが組んだ自転車を自分なりの感覚で選ぶのがこの店の流儀。まるで古着の店のようだ。

そんなユニークな店になったわけは、武捨さんの本職が洋服のデザイナーであることに由来する。

「ものを生み出す仕事の辛さを感じていたとき、中古自転車を磨いてみたら、作業した分だけ光って応えてくれたんです。そこにハマってしまい、お店に飾ったら反響が大きく合計120台も売れて」

2017年、洋服の店を畳み、それからは自転車だけを売ることに。結果的に、知識ではなく感性でものを選ぶお客さんが集まってくるようになったという。

「自転車店の風上にも置けない、変な店ですよ」と武捨さんは笑う。