ヒョンデIONIQ 5には
エンタメ力がある
この夏の出来事。ある日、家の近所のカフェの駐車場に見たことのないグッドルッキン車が止まっていた。直線的で未来的なデザインなのだが、フロントとリアのライトがピクセルデザインになっていて、80sのファミコンゲームのようなレトロフューチャー感が漂い、どことなくジウジアーロっぽくもあり、正面から見ればストームトルーパーのようにも見えて……というか、これはヒョンデIONIQ 5ではないか!
クルマの周りをウロウロジロジロなめるように見ていたら運転手の男性が駐車場に戻ってきた。「どうですか、このクルマ」と声をかけてみると、男性はニヤッと笑って言った。「今日1日レンタルしてるんですけど、めちゃめちゃいいです。乗り心地もいいし。K−POPって感じっすよ」。ヒョンデは韓国の自動車メーカー。昔は「ヒュンダイ」と呼ばれていた。ゼロ年代の「冬ソナブーム」の頃、ヨン様を起用したヒュンダイソナタ(という名前のクルマ)のCMをやっていたのを覚えている。
しかしその後、欧米や中国で売れたのとは裏腹に日本からは撤退、ほぼ見かけないクルマとなってしまった。ところが2021年、IONIC 5が発表されるや話題となり、ドイツやイギリスなどのカーオブザイヤーを次々と受賞。今年5月からは日本に再上陸して販売開始。なんだか「中学時代の同級生と15年ぶりに街でバッタリ会ったらすげーカッコよくなってて留学して英語もしゃべれるハイスペック人間になってた」的感慨を覚えた。
そして大ヒット映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』にも登場し(ハッピー・ホーガンのクルマとしてチラッと出てくるだけなんだけど)、映画とIONIC 5のコラボCMは、監督のジョン・ワッツ自らディレクション。スパイダーマン役のトム・ホランドと親友ネッド役のジェイコブ・バタロンも出演、映画のスピンオフ的内容が話題となった。
くだんの男性はK−POPに譬えたが、それは的を射ている。BTSやポン・ジュノやイカゲームや、そんな韓流エンタメの延長線上にIONIC 5はある。だってピクセルデザインの時点でエンタメ。しかもフロントライトのピクセル“数”は256。洒落が利いているんだよなあ。