Live

ジャン=ミシェル・オトニエルの棚。「自由、夢、願い、世界の多様性に立ち返る秘密空間」

神秘的なオブジェを扱う骨董店のようなその棚が、透明感溢れるガラス作品などで知られるアーティスト、ジャン=ミシェル・オトニエルの大切な場所であることに少なからず驚きを隠せない。だが、そここそが、稀代の作家のインスピレーションの源だった。

photo: Jean Marie del Moral / text: Chiyo Sagae / edit: Kazumi Yamamoto

自由、夢、願い、世界の多様性に
立ち返るアーティストの秘密空間

小さい頃から小石や貝殻を拾いポケットに入れていた少年が「特別なオブジェ」の存在に気づいたのは、女友達がくれた「月へのチケット」。子供のパーティで交換し合うプレゼントの一つだったそうだ。「それは、夢の原点であり、その後の僕の人生への提案でした」。アーティストになることを意識したきっかけであり、その選択が何のためだったのかを、そのチケットが今も喚起してくれるという。

時を超えて祈りを捧げられた聖人、聖母像、病気の治癒を神に感謝して子供たちが描いたお札、羽根、貝殻……。棚にはこれまでの旅の記憶や感動を宿すオブジェが、身を寄せ合うように並ぶ。

「どれも名もなき人々の願いがこもるオブジェです。僕は、こうした人の思いや物語にいつも注意深くいたい。本とエモーショナルなオブジェで満たされたこの棚は、想像の自由、夢、そして世界の多様性を僕の中に呼び覚ましてくれるのです」

アンティークのガラス容器の内部に「強いオブジェを中心に別のオブジェを加え、劇場のように物語を構成する」とオトニエル。羽根や砂糖、時に人毛といった素材の儚さもさることながら、何よりこれらの思いをガラス容器に入れて守る。

「今、自国の文化や考えを互いに押しつけ合う時代に、この普遍的な記憶は忘れてはならないものと強く感じています」。今だからこそ伝えたくて、作家は自身の「秘密の花園」を公開してくれた。