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地クラブの工房、千葉〈マスダゴルフ〉へ。使う人の潜在能力を引き出すクラフツマンズ・ウェッジ

ゴルフの世界にも日本各地でもの作りに励むクラフツマンがいる。ものは「地クラブ」と呼ばれ、少数精鋭で大手には成し得ないこまやかな作業を誇り、海外からの呼び声も高い。ここではウェッジを得意とした指折りの工房〈マスダゴルフ〉を訪ねた。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Masae Wako

「目指しているのはプレーヤーの力を引き出すクラブ。足りない技術を補う道具ではなく、使ううちにスイングが良くなるクラブです」

そう話すのは、千葉県八千代市の〈マスダゴルフ〉代表でクラブデザイナーも務める増田雄二さん。隅々まで掃除の行き届いた工場内には、増田さんが海外で集めたポップなパネルもディスプレイされている。

「スポーツは楽しみ楽しませるもの。道具を作る環境も、楽しく働けるようにしておきたいんです」

始まりは、自動車のエンジニア出身の増田さんが、独自に作っていたパター。これが道具に厳しいことで知られるジャンボこと尾崎将司の目に留まり、尾崎が使う全クラブの開発と製作を担うことになったのだ。

その後「プロの道具を作る技術を、一般プレイヤーにも提供したい」と、〈マスダゴルフ〉を設立したのが2004年。今もドライバーやパターから天然ゴム製のグリップやシャフトまで、すべての道具を自社で手がけている。中でも名高いのは《スタジオウェッジ M425》。

アプローチやバンカーからの脱出時など短距離に使うウェッジのうち、ネックの形が特徴的でボールにスピンをかけやすいものを“グースネック”と呼ぶ。M425は、このグースネックウェッジの代名詞的存在だ。

「軟鉄鍛造鋼をコンピューター加工と職人の手削りで仕上げたヘッドは、ボールが食いつくような打感が特徴。構えた時に低めで重い弾道のイメージが湧き、そのイメージ通りの弾道で球が飛ぶように作っています」

そんな増田さんに、研磨の工程を見せてもらう。高速回転する研磨機に当てたヘッドを動かしながら、削り続けること約5分。一瞬も機械からヘッドを離さず、一筆書きのような曲線で立体を作る。型もなく目測での作業だけれど、この時点で重さはすでに理想と近い。

「道具は重量が肝心。理想の形状に仕上がると同時に、重さも理想の数値になっているのが一流の仕事です」

プロ用だけでなく、一般用も使い手に合わせて作ることが多い。「お客さんには職人の顔が見えるし、職人も相手のことをよく知って、この人のためにと努力する。そういう気持ちは必ずモノに宿ります。一流の職人が作ったクラブは、構えた時に“打てる気”がするもの。だから、一度使うと手離せなくなるんです」

〈マスダゴルフ〉の《スタジオウェッジ M425》
尾崎将司の愛用モデルを基に製品化。ソール幅が広く打点が安定し、打ち出しの高さが揃う。打音の良さも魅力。写真はサンドウェッジ。ロフト角58度、銅メッキ仕上げ。《スタジオウェッジ M425》特注35,200円~。