Listen

今の世の中に足りないのは、泣きの音楽だ。中川昌利が作るのはウェットなJ−POP

3月にファーストアルバムを発表したシンガーソングライター・中川昌利さんが、自身の音楽づくりのテーマにしていること。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: BRUTUS

シティポップは言うまでもなく、歌謡曲、渋谷系、アイドルポップなど、過去の日本の音楽の再評価が進む中、見落とされがちなのが80〜90年代頃の王道のJ−POP。3月にファーストアルバムを発表する中川昌利は、そんなテイストの音楽を現代に蘇らせるシンガーソングライターだ。

『君と出会う前の気持ちを僕は思い出せない』
ドラムに岡山健二(ex.andymori)、ベースに有島コレスケ(ドレスコーズ)らゲストミュージシャンを迎えた待望の1st。「悪魔さん」「やさしいね、」「アホウ」「ダイスキダイスキダイスキ」「硝子色の街、恋人」など全12曲。部室/2,500円。

「Mr.Childrenが大好きで。槇原敬之、大江千里、オフコース、井上陽水、もっと遡れば演歌まで、過剰なほどウェットで泣けるメロディの系譜が日本の音楽史にはある。音楽雑誌や評論の中で語られることは少ないですが、今、そうした音楽をやれないかというのが自分のテーマです」

近年は、豊田道倫や曽我部恵一ら、2回りほど世代が異なるロックミュージシャンたちとの共演でも知られるようになった。

「豊田さんや曽我部さんに興味を持っていただけたことは嬉しかったです。ある意味、80年代のキラキラしたポップスへのカウンターとして音楽をやってきた方々だと思うのですが、下の世代の自分がそれをメタ的に作っているのを、懐かしい気持ちもありながら面白がってくれているのかなと」

ポップでキュンとするメロディを自覚的に構築する中川の楽曲は、ライトからコアまで幅広い層に届く可能性を持っている。

「自分が目指しているのは、TSUTAYAで5枚1,000円で借りたCDを聴いていた時代の音楽。そのニュアンスが伝わったら。純烈みたいな、不思議な売れ方ができたらなって思っています(笑)」

中川昌利